TORENDIA
帆船の絵につい
て
岸田國士
TORENDIA
帆船の絵について
本文約370字 ・ 読了時間 約1分
あらすじ(AIが作成しました)
戦地へ赴く友人が餞別に置いていった佐伯祐三の帆船の小品画を通して、その画家の詩情と魂の郷愁に触れる岸田國士の随筆。
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🎧 帆船の絵について / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ
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もう十年も前のこと、私が友人A君に、ふとした話の序に、佐伯祐三の絵が好きだといふと、その友人は、それからしばらくたつて、これはどうだといつて、小さな風景のスケッチをもつて来てくれた。パリ郊外のムードンあたりと思はれる佐伯にしては珍しく色彩の明るい、包装紙かなにかにサラリと描いた初秋の森である。私は、うれしかつた。
ところが、戦争がはじまつて、A君は、報道班員として南方へ連れて行かれ、私が、心ばかりの送別の宴に彼を招くと、そのとき、――自分はもうどうなるかわからないのだから、この絵もよかつたら、あなたのところへおいていく、と言ひ、ひと目で私の心をとらへた、小品ながら、佐伯祐三独特の深い詩情をたゞよはせた傑作を投げ出した。私はこの絵に描かれた空と海と、黙してたゝずむやうな帆船の前にたつと、知らずしらずこの作家の魂の郷愁にふれる想ひがする。
完
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