木曾の一平
本文約3,400字 ・ 読了時間 約7分
あらすじ(AIが作成しました)
木曾の山里で祖父・一助に育てられた若者・一平は、過酷な試練を通じて卓越した身体能力と機転を利かせる知恵を身につけていく。ある日、猛り狂う猪に襲われた一助を窮地から救い出した一平の機転は村で評判となる。一助は、孫をさらに社会の役に立つ人物へと成長させるべく、一平を軍団の兵士として都へ送ることを決意する。やがて都へ上った一平は、持ち前の力と知恵で手柄を立て、衛門府の役人として出世の道を歩み始める。
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むかし、木曾の山里に、一助といふ年とつたきこりがゐました。
一助のところに、一平といふ若者がゐました。一助の孫で、両親に早く死なれて、一助のてつだひをしてをりました。
一助と一平とは、いつも仲よく、山へ薪をとりに出かけ、その薪を町へ売りに出かけました。
ところが、ときどき、一助はへんなことをいひだしました。
「わしは、どうしても、手づかみでとつた大きな鯉が、たべたくなつた。幾日かかつてもよいから、大きな鯉を、手づかみでとつてきてはくれまいか。」
一平は答へました。
「はい、とつてきませう。」
一平は、お祖父さんの一助に、たいへん孝行です。
一平は川へ出かけて行きました。
ところが、大きな鯉を手づかみでとることは、なかなかよういではありません。川の中を歩きまはり、深いところは泳いだり水にもぐつたりして、大きな鯉をさがしました。そして見つかると、手でつかまへようとしますが、鯉はするりと逃げてしまひます。
一平は、毎日毎日、川へ出かけて行きました。
たうとう、ある日、大きな鯉を、手づかみでとることができました。
一助は山から帰つて来て、一平の肩をたたいてほめました。
「えらい、えらい。こんな鯉を手づかみにするとは、日本一の若者だ。」
一助はその鯉を料理して、一平といつしよにたべました。
一平はまた毎日、一助について、山へ薪をとりに出かけました。
ところが、あるとき、一助はまたいひだしました。
「わしは、どうしても、手づかみでとつた兎が、たべたくなつた。幾日かかつてもよいから、兎を一匹、手づかみでとつてきてはくれまいか。」
一平は答へました。
「はい、とつてきませう。」
そして一平は、野や山へ、兎をさがしに出かけて行きました。
ところが、兎を手づかみでつかまへるのは、鯉をつかまへるより、いつそうむづかしいことでした。せつかく兎を見つけても、兎はす早く逃げてしまひ、隠れてしまひますので、どうにもしやうがありません。
それでも一平は、毎日毎日、野や山へ出かけて行き、兎を見つけては追つかけました。ころんだり、崖からおちたりして、怪我をすることもありました。
たうとう、ある日、兎を一匹、手でとらへることができました。