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TORENDIA

孝行鶉の話

本文約5,900字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

野原で年老いた母と暮らす親孝行な子鶉は、その美しい鳴き声を王に見初められ、立派な籠に入れられる。母を案じて歌うことも餌を食べることも拒む子鶉に、王は心を動かされ解放する。その後、子鶉は病に伏した王のために再び御殿へ赴き、歌声で疱瘡神を追い払い王を救う。やがて狐に命を狙われ尾を失った子鶉に対し、王は宮廷の庭で暮らすことを許し、二度と籠には入れないという約束を交わして厚く保護する。

宮原晃一郎

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🎧 孝行鶉の話 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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一

ある野原の薄藪の中に、母と子との二匹の鶉が巣を構へてをりました。母鶉はもう年よりなので羽が弱くて、少し遠いところには飛んで行くことが出来ませんでした。ですから巣から余り遠くないところで、小さな虫を捕つたり、粟の穂を拾つたりして、少しづゝ餌をあつめてをりました。子鶉は至つて親孝行で、毎日朝早くから巣を飛び出して、遠くへ餌をあさりに出かけ、夕方になつて帰つて参ります。そしていろ/\おいしいものを持つて来てはおつ母さんの鶉に喰べさしてをりました。

さうするうちに秋も更けて、丁度中頃になりましたから、冬の間に喰べるものを貯へなくてはなりません。そこである日天気もいゝので、近くの野を謡ひながら、あちこち飛び廻つてをりました。鶉の声といふものはもと/\晴々として大へん威勢のいゝもので、それを聞くと気がせい/\して病気をしてゐるものでもすぐなほるほど愉快なものです。それだのにその上にこの子鶉はとりわけ美い声でそれが「チックヮラケー。」と鳴きますと、本当に深くかゝつてゐる霧もすつかり晴れてしまふやうな気持のよい、美しい声をもつてをりました。

丁度その時、国の王様が、そこの野原に遊びに出ていらつしやいました。すると子鶉の鳴く美しい声をお聞きになりますと、家来に向つておつしやいました。

「私はまだあんないゝ声の鶉を聞いたことがない。早速あれを生捕りにしてまゐれ。お城につれて行つて飼うてつかはすから。」

そこで家来のものどもは、すぐに馬の尾一筋づゝを結んだ網をそこいら中に張りまはしますと、可哀さうに子鶉は、すぐ捕はれてしまひました。

王様はいゝ声の鶉が手に入つたので大よろこびです。すぐに国中で一番上手な職人を呼んで、りつぱな籠をお作らせになりました。その籠といふのが大変なものでした。まづ四隅の柱と横の桟とは黄金で作り、彫刻をして、紅宝石、碧玉、紫水晶などをはめそれに細い銀の格子が出来てをりました。籠の天井は七色の絹の糸の網で、寵を吊るす紐は皆簪の玉にする程の大きな真珠がつないでありました。

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