一
或山の村に、きれいな、青い湖水がありました。その湖水の底には、妖女の王さまが、三人の王女と一しよに住んでゐました。王さまは、夏になると、空の青々と晴れた日には、よく、小さな妖女たちをつれて、三人の王女と一しよに、真珠の舟に乗つて出て来て、湖水の岸のやはらかな草むらへ上りました。
妖女たちは大よろこびで、草の中をかけまはつたり、小さな草の花の中へはいつて顔だけ出してお話をしたり、大きないなごにからかつたりして、おほさわぎをしてあそびました。中には、蜘蛛の網の、きら/\した糸をあつめて、顔かけをこしらへてかぶるものもありました。小さなかはいらしい妖女には、その顔かけが、よくにあひました。
三人の王女は草の上に坐つて、ふさ/\した金の髪を、貝殻の櫛ですいて、忘れなぐさや、百合の花を、一ぱい、飾りにさしました。三人は、人間の中の一ばん美しい女でさへも、とてもくらべものにならないくらゐの、それは/\たとへやうもない、きれいな/\妖女でした。そのかはいらしい目は、よひの星よりももつと美しくかゞやいてゐました。
三人は、力のこもつた、うつくしい歌をうたひました。森の小鳥は、みんな、じぶんたちの歌をやめて、うつとりと、その歌に耳をかたむけました。
王さまはその間、木の洞の中にはいつて、日がしづむまで眠つてゐました。王さまはもうずゐぶんの年でした。いつも水につかつてゐる青い髪や、青い長い口ひげは、もはや水苔のやうにどろどろにふやけて、顔中には、かぞへ切れないほどのしわが、ふかくきざまれてゐました。
或とき、二三人の旅人が、この湖水のそばをとほりかゝりました。その人たちは、このあたりの景色のいゝのに引きつけられて、湖水のそばへ、神さまの礼拝堂をたてました。
すると、それを聞きつたへて、毎年方々から、いろんな人がおまゐりに来ました。礼拝堂の番人は、日に三度づゝ、小さな鐘をならしました。