TRENDIA CLASSIC

ざんげ

鈴木三重吉

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ロシアのウラディミイルといふ町に、イワン・アシオノフといふ商人がゐました。住居と、店を二つももつてゐるほどのはたらき人で、謡をうたふことの大好きな、おどけ上手の、正直ものでした。

そのイワンが或夏、ニズニイといふ町の市へ品物をさばきに出かけました。イワンが馬車をやとつて荷物をつみ入れさせ、子どもたちや、おかみさんに、いつてくるよとあいさつをしますと、おかみさんは心配さうな顔をして、

「今日立つのはおよしになつたらどうでせう。私はいやな夢を見たんですが。」と言ひました。

「ふゝん、もうけた金を使つてでも来るかと気になるのかな。」とイワンは笑ひました。

「そんなことならいゝんですけれど、私はそれはへんな夢を見たんです。あなたがニズニイからかへつていらしつて、帽子をおぬぎになると、おつむりの髪がすつかり白髪になつてる夢を見たんです。」

「はゝゝそれはけつこうな前兆だよ。まあ/\見てお出で。品物をすつかり売り上げて、土産を買つて来るから。」

イワンはかう言ひ/\馬車を走らせて出ていきました。そしてニズニイまでの道のりの半分まで来ますと、リアザンの町から来た、或知合の商人に出あひました。その晩二人は、或村の宿屋について、一しよにお茶を飲んだりしたのち、となり合つた部屋にはいつてやすみました。

イワンはいつも夜は早く寝るのが習慣でした。それであくる朝も、涼しい間に歩かうと思つて、まだ夜のあけないうちに馬車つかひをおこして、馬を引き出させました。宿屋の亭主たちは裏手の小さな建物に寝てゐました。イワンはその亭主をおこしてお金をはらつて立ちました。

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