沙漠の古都
本文約108,800字 ・ 読了時間 約218分
あらすじ(AIが作成しました)
マドリッドで発生した燐光を放つ怪獣の噂をきっかけに、民間探偵レザールが事件に遭遇する。一方、上海を訪れた探偵ラシイヌは街を彷徨いながらある唄声の行方を追う。物語は次第に未知の領域へと展開し、森林の岩窟で老人から人猿たちの守る広大な地下財宝と湖水を操る力を託された張教仁が、老人の死後、新たな王としてその地を支配し、永遠の神秘を守り続ける姿を描く。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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第一回 獣人
一
「マドリッド日刊新聞」の記事……
怪獣再び市中を騒がす。
去月十日午前二時燐光を発する巨大の怪獣何処よりともなく市中に現われ通行の人々を脅かし府庁官邸の宅地附近にて忽然消滅に及びたる記事は逸速く本社の報じたるところ読者の記憶にも新たなるべきがその後怪獣の姿を認めずあるいは怪獣の出現も通行の人々の幻覚に過ぎず事実上かかる怪獣は存在せざりしには非ざるやと多少の不安と危惧とをもって両度の出現を待ちいたるところ……。
「ホホオそれじゃまた怪獣が出現したというのだね?」
民間探偵のレザールが全部新聞を読んでしまわないうちに、傍らで聞いていた友人の油絵画家のダンチョンが、驚いたようにこう云った。
「どうやら再び現われたらしい――ところが今度はこの前と違って、顔ばかりに……むしろ眼の縁だけに燐光を帯びている獣だそうだ。まあ聞きたまえ読むからね」
南欧桜の咽せ返るような濃厚な花の香が窓を通して室の中いっぱいに拡がっていた。その室でレザールとダンチョンとは肘掛椅子に腰かけたまま軽い朝飯をしたためた後、おりから配達された新聞をこうして読んでいるのであった。
「いいかい読むぜ。聞きたまえよ」
そこでレザールは読みつづけた。その要点はこうである。
――昨夜、すなわち三月十日、時刻もちょうど午前二時頃、両眼の縁に燐光を纒った、犬のような形の動物が、忽然街路に現われたが、府庁官邸の宅地まで行くと、そのまま姿が見えなくなり、それと同時に一軒の家から、恐怖に充ちた男の声が、一瞬間鋭く響き渡ったが、それもそのまま静かになった。そして不思議にも怪獣の姿は、どこにも見えなかったと云うのである。
「燐光を放す動物なんて、実際そんなものがあるのだろうか?」
「さあ」とレザールは考え深く、「全然ないとも云われない。魚には確かにあるのだからね」
「そりゃ魚にはあるだろうけれど――例えば烏賊などはその通りだが、眼の縁だけに燐光を放すそんな獣ってあるものだろうか――それはそれとしてもう一つこの新聞記事で見るとどうやら奇怪な動物なるものは、二匹いるように思われるね」ダンチョンはレザールの顔を見て審かしそうに云ったものである。