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TORENDIA

東京に生れて

本文約930字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

東京に生まれ育った筆者が、絶えず変貌を続ける都市としての街の光景や、かつての面影を失いつつある不愉快な現況を綴る。アメリカ式建築や増え続ける交通機関に馴染めない苛立ちを感じつつも、硝子窓の光や軒先の影に都会特有の美を見出そうと試みる。さらに、広重の浮世絵を彷彿とさせる稀な情景との遭遇や、自身の住む郊外に対する個人的な嫌悪感など、変化する都市の姿と自己の心象風景を率直な眼差しで描く。

芥川龍之介

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🎧 東京に生れて / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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変化の激しい都会

僕に東京の印象を話せといふのは無理である。何故といへば、或る印象を得るためには、印象するものと、印象されるものとの間に、或る新鮮さがなければならない。ところが、僕は東京に生れ、東京に育ち、東京に住んでゐる。だから、東京に対する神経は麻痺し切つてゐるといつてもいゝ。従つて、東京の印象といふやうなことは、殆んど話すことがないのである。

しかし、こゝに幸せなことは、東京は変化の激しい都会である。例へばつい半年ほど前には、石の擬宝珠のあつた京橋も、このごろでは、西洋風の橋に変つてゐる。そのために、東京の印象といふやうなものが、多少は話せないわけでもない。殊に、僕の如き出不精なものは、それだけ変化にも驚き易いから、幾分か話すたねも殖えるわけである。

住み心地のよくないところ

大体にいへば、今の東京はあまり住み心地のいゝところではない。例へば、大川にしても、僕が子供の時分には、まだ百本杭もあつたし、中洲界隈は一面の蘆原だつたが、もう今では如何にも都会の川らしい、ごみ/\したものに変つてしまつた。殊にこの頃出来るアメリカ式の大建築は、どこにあるのも見にくいものゝみである。その外、電車、カフエー、並木、自働車、何れもあまり感心するものはない。

しかし、さういふ不愉快な町中でも、一寸した硝子窓の光とか、建物の軒蛇腹の影とかに、美しい感じを見出すことが、まあ、僕などはこんなところにも都会らしい美しさを感じなければ外に安住するところはない。

広重の情趣

尤も、今の東京にも、昔の錦絵にあるやうな景色は全然なくなつてしまつたわけではない。僕は或る夏の暮れ方、本所の一の橋のそばの共同便所へ入つた。その便所を出て見ると、雨がぽつ/\降り出してゐた。その時、一の橋とたてがはの川の色とは、そつくり広重だつたといつてもいゝ。しかし、さういふ景色に打突かることは、まあ、非常に稀だらうと思ふ。

郊外の感じ

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