風ばか
本文約2,900字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
人間の身体は左右で形や力が異なり、目隠しをしてまっすぐ歩くことが難しいと教わった子供たちは、野原で歩行訓練を始める。その中でマサちゃんは風の音を悪口と誤解し、応戦して取り乱してしまう。帰宅後、父親から風は息そのものだと教わり、風に逆らって争うことの滑稽さを理解したマサちゃんは、風と自分の幼稚さを笑い飛ばす。
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一
――皆さんは、人間の身体は右と左とまったく同じだと、思っていますでしょう。右と左とにそれぞれ、眼が一つ、耳が一つ、鼻が半分、口が半分、手が一つ、足が一つ……。まんなかから切ってみると、右と左とは、まったく同じように見えます。ところが、よくしらべてみると、ずいぶんちがっています。いくら神様でも、生きた人間の身体を、右と左とまったく同じにこさえることは、おできにならなかったのでしょう。自分の顔やひとの顔を、よく見てごらんなさい。眼でも耳でも、右と左では、その大きさや形がみなちがっています。右と左と同じなものは、けっしてありません。手なんか、大きさも長さもちがうし、力もちがいます。ことに、胸の中や腹の中になると、右と左とはひどくちがってるものです。それですから、たとえば、目かくしをして、広いところを、歩いてみてごらんなさい。けっしてまっすぐに歩けるものではありません。自然に、右か左かにまがってしまいます。人間は、どんなりっぱな身体のひとでも、右と左とはかたわです……。
そういう話を、先生がなさいました。
なるほど、よく見ると、眼でも耳でも、右と左とは同じ形ではありません。
おかしいな、と子供たちは思いました。
が、なおおかしいのは、目かくしをしてまっすぐに歩けないことでした。自分ではまっすぐに歩いてるつもりでも、いつのまにか少しずつ、右か左かへまがってしまいます。
「みんなかたわだ」
「なに、かたわなもんか」
「じゃあ、野原にいってやってみよう」
「ようし。みんなこいよ」
二
広いたいらな野原でした。春さきのことで、日がうららかにてっています。芝草が青々とのびだしています。蝶がとんでいます。空には高く、雲雀がないています。
みんなでじゃんけんをして、勝ったものが一番先に、ハンケチで目かくしをして、まっすぐに歩きだしました。ほかの者は立って見ています。
目かくしをした者は、まっすぐに歩いてるつもりですが、やがて、右か左かに少しずつまがっていきます。それを見ると、みんなはわっとはやしたてました。けれど、笑った者もみな、自分の番になると、やはりまっすぐには歩けませんでした。
「こんどは僕だ、見ておれよ」