人形使い
本文約7,100字 ・ 読了時間 約15分
あらすじ(AIが作成しました)
田舎で下手な人形使いと蔑まれていた甚兵衛は、山中の神社で出会った猿と大蛇退治を成し遂げる。報酬として猿から操り人形の術を教わった甚兵衛は、猿が人形の中に隠れることで自由自在に動く仕掛けを用いて興行で成功を収める。都へ進出してさらに人気を博すが、ある日人形が盗賊に奪われる事態に直面する。甚兵衛と猿は協力して人形を取り戻すものの、無残に壊された姿を見て興行から引退を決意し、元の地で静かな生活を送る。
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一
むかし、ある田舎の小さな町に、甚兵衛といういたって下手な人形使いがいました。お正月だのお盆だの、またはいろんなお祭りの折に、町の賑やかな広場に小屋がけをして、さまざまの人形を使いました。けれどもたいへん下手ですから、見物人がさっぱりありませんで、非常に困りました。「甚兵衛の人形は馬鹿人形」と町の人々はいっていました。
甚兵衛は口惜しくてたまりませんでした。それでいろいろ工夫をして、人形を上手に使おうと考えましたが、どうもうまくゆきません。しまいには、もう神様に願うよりほかに、仕方がないと思いました。
どの神様がよかろうかしら、と甚兵衛はあれこれ考えてみました。町にはいくつも神社がありましたが、上手に人形を使うことを教えてくださるようなのは、どれだかわかりませんでした。さんざん考えあぐんだ末、いっそ人のあまり詣らぬ神社にしようと、一人できめました。
町の裏手に山がありまして、その山の奥に、淋しい神社が一つありました。甚兵衛は毎日、そこにお詣りをしました。あたりには大きな杉の木が立ち並んでいて、昼間でも恐ろしいようなところでした。けれども甚兵衛は一心になって、どうか上手な人形使いになりますようにと、神様に願いました。
ある日のこと、甚兵衛はいつものとおりに、その神社の前に跪いて、長い間お祈りをしました。そしてふと顔をあげてみますと、自分のすぐ眼の前に、真黒なものがつっ立っていました。甚兵衛はびっくりして、あっ! といったまま、腰を抜さんばかりになって、そこに倒れかかりました。するとその真黒なものが、からからと笑いました。甚兵衛は二度びっくりして、よくよく眺めますと、それは一匹の猿でした。
「甚兵衛さん、甚兵衛さん」と猿はいいました。
甚兵衛は口をあんぐり開いたまま、猿の顔を眺めていました。それを見て猿はまた笑いだしながら、いい続けました。