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TORENDIA

諦らめアネゴ

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

岡本綺堂の劇「相馬の金さん」において、上野戦争で深手を負い切腹を決意した金さんと、その恋人である鉄火な常盤津の師匠の姿を描く。恋人は金さんの切腹を止めることも生き延びようと説くこともなく、ただ「ナサケないことになったネエ」と繰り返す。本書は、江戸時代の女性が持つ「生きぬく」という発想の欠如と、日本独自の鉄火な気質を分析し、現代の情勢と対比させながら、このアネゴの物語が持つ不変の日本的独自性を論じる。

坂口安吾

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🎧 諦らめアネゴ / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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岡本綺堂「相馬の金さん」僕はこの有名な舞台を見たことがなく、読んだのだけれども、一場面が記憶に残つてゐる。芝居の一番終りのところで、金さんが上野の戦争に参加して刀をふりまはしたけれども一向に効なく敗戦、金さんは山から逃げだしてくる。金さんの恋人に常盤津だか何かの師匠があつて、金さんの身の上を心配して戦場の近くまで探しにくると、落ちてくる金さんとバッタリ出会つた。金さんは深傷で逃げ延ることが出来ないから切腹するといふ。友達に介錯たのむ、といふので、よろしくなにがしの芝居があつて金さん結局切腹して芝居は終りとなるのであるが、戦場まで恋人を探しにくるといふ鉄火の常盤津のお師匠さんのくせに、金さんの切腹を押しとめ、傷は浅いよ、シッカリおしよ、とか、一緒に生き延びよう、とか、およそこの意味のことを一言も喋らぬのである。お師匠さんが何度となく繰返すセリフはたゞ一つ、ナサケないことになつたネエ、かう呟くばかり。イザ金さんが切腹となつて腹をおしひろげても、ナサケないことになつたネエ、金さんの首がポロリと落ちて、ナムアミダブツ/\。之にて幕となる。

僕がこの劇を読んだのは十年も昔のことで、モロッコといふ映画がきて、日本中の娘達がハダシになつて恋人の後を追ひかけさうな鼻息の荒い時代であつたから、ビックリした。新鮮な感すら覚えた。

近頃は芸者の思想も変つてきて、沙漠の中をハダシになつて駈けだしさうな芸者もたくさんゐるけれども、江戸時代の鉄火思想といふものには「生きぬく」思想は殆どなくて、一緒にやりとげるのは死ぬことぐらゐ、結局、ナサケないことになつたネエ、ナムアミダブツ/\、日本産の鉄火なアネゴは案外こんなものであつた。

僕は然し、かういふアネゴが好きだといふのではないので、ハダシになつて沙漠をかけだすチンピラ娘が案外好きかも知れないのだが、世界中の女といふ女がみんなハダシで地の果まで駈けだしさうな時世に、ナサケないことになつたネエ、かういふアネゴの物語を読んでみなさい。誰でも驚く。

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