安吾の新日本地理
本文約24,400字 ・ 読了時間 約49分
あらすじ(AIが作成しました)
大阪を訪れた著者が、新聞記事から覗くこの街の商魂やストリップ劇場の勲章騒動、裏通りに溢れるゴールドラッシュ的なエネルギーについて綴る随筆。街の表通りを支配する過度な規制と、その裏側に存在するエゲツなくも活気ある人々の様相を対比させ、大阪という都市が内包する独特の精神構造と、近代化の只中にあっても消えない泥臭い魅力を、独特の観察眼をもって描き出す。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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檀一雄君の直木賞「石川五右衛門」が連載されてから、「新大阪」という新聞が送られてくるが、本社から直接来るのじゃなくて、東京支社から送られてくる。おまけに伊東の宛先の新番地が大マチガイときているから、あっちこッちで一服してくるらしく、到着順の前後混乱甚しく、連載小説を読むには全く不適当である。
しかし、この新聞はオモロイな。これを大阪のエゲツナサというのであろう。「いきなりグサッ!」という見出しのついた記事をよむと、娘が暗闇を歩いていると怪漢が現れいきなりグサッ! と刺されて重態だという。なるほど「いきなりグサッ!」に相違ない。あるいは、それ以外の何者でもあり得ないほどの真実を喝破しているのかも知れないが、物事は時にあまり真に迫ってはいけないなア。それを日本語で因果物などとも言うよ。大阪のさるお嬢さんが教えてくれた言葉に、エロがかったエゲツナサを特に「エズクロシイ」と云うそうだ。舌がまわらねえや。昨年来「新大阪」を愛読したおかげで、大阪のエゲツナイ話やエズクロシイ話は、大阪へ行かないうちから、相当心得があったのである。
先月、というと、一月のことだが、その月末ごろに、三流どこのあまりハヤラないダンスホールがダンサー各員一そう奮励努力せよ、そこで週間の売上げナンバーワンからテンまでに勲章を授与した。そう云えば、大阪のストリップは始まる前に軍艦マーチをやるよ。我ながらクダラン所は実によく見物して廻ったなア。この勲章がホンモノの勲章で、勲二等から八等ぐらいまで。ナンバーワンが勲二等をもらったそうだね。古物屋に山程売りにでていて、勲二等でも四百円ぐらいだそうだ。一山買ってきて有効適切に用いたのである。貰った女の子は喜んだそうだ。