本文へ移動
TORENDIA

青年実業家

本文約2,000字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

日本の経済界に蔓延する投機的な実業家たちの醜態や、公共思想の欠如を指摘し、実態の伴わない実業の在り方を論じる。また、商業学校が実地に即さない教育を行っている現状を厳しく批判する。立派な実業家を自称しながらも、誠実な道を踏み外して小才を弄ぶ若者や、株屋の真似事に耽る実業家志望者の姿勢を鋭く糾弾し、真面目に富を築く道があることを説きつつ、既存の経済界全体にはびこる根深い空虚さを浮き彫りにする内容を収める。

内田魯庵

速度
🎧 青年実業家 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 3

「全でお咄にならんサ。外債募集だの鉄道国有だのと一つの問題を五年も六年も担ぎ廻る先生の揃つてる経済界だもの。近ごろ君、経済書の売行が好いさうだが、何の事は無い、盗賊を見て縄を綯ふやうなもんだ。戦争以来実業が勃興したといふのが間違つてる。何が勃興してゐるもんか、更に進歩しないと云つても宜しい、畢竟空株の空相場が到る処に行はれたので一時に事業が起つたやうに見えたが、本と/\が空腹に酒を飲んだやうなものでグデン/\に騒ぎ立つた挙句が嘔吐を吐いて了うとヘタ/\に弱つて医者の厄介になると同様だ。我々の会社を見給へ、重役様がボーナスを少とでも余計握まうといふ外には何の考も無い。元来実業界の先輩と威張つてる奴らは昔からの素町人か、成上りの大山師か、濡手で粟の御用商人か、役人の古手の天下つたのか、斯ういふ連中のお揃ひだから真の文明流のビジ子スを知つてる者は無い。投機や株の売買も商売の一つだから行つても宜いが、最う些と道徳を重んじて呉れないと困る、昔から云つてる事つてすが日本人は公共思想が乏しくて商売をしても他を倒すことばかり考へて商売其物を発達せしめやうといふ考へは無い。同商売の者は成るべくトラスト流に合同して大資本を作つて大きな商売をして貰ひたいのだが、日本人同志の間では小な利慾心が邪魔をするから迚も相談が纏まらない。現に僕が関係してゐる会社では三四の同業者があるから合同して大きな工場を建てたら如何だといふ意見を持出した処が、此方の会社が十分優勢を占めてるのに以ての外だと排斥されて了つた。亜米利加では大資本家が小資本家を吸収して利益を壟断すると云つてトラストの幣を頻りに論じてるが日本では先づ当分トラストが行はれるほど進歩しない。一緒に大きく儲けやうとはしないで他人に儲けられまい儲けられまいとケチ/\してゐる。裏店根性だ……

内田魯庵の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本