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TORENDIA

二葉亭追録

本文約8,600字 ・ 読了時間 約18分

あらすじ(AIが作成しました)

二葉亭四迷が生きていればロシア革命にどう対峙したかを論じる随筆。彼は社会主義思想に理解を示しつつも、革命勢力を夢想的と見て官憲側の論理に同情するなど、権威に対する複雑な心情を抱いていた。本書は、革命の激動の中で舞台に立つことを夢見つつも、慎重で実行力に欠ける彼の性格上、現実では好機を逸したであろうと分析する。また、日本の風土において、国士の志と繊細な文学者の間で葛藤し続けた彼の生涯を「失敗の英雄」として描く。

内田魯庵

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一 二葉亭が存命だったら

二葉亭が存命だったら今頃ドウしているだろう? という問題が或る時二葉亭を知る同士が寄合った席上の話題となった。二葉亭はとても革命が勃発した頃まで露都に辛抱していなかったろうと思うが、仮に当時に居合わしたとしたら、ロマーノフ朝に味方したろう乎、革命党に同感したろう乎、ドッチの肩を持ったろう? 多恨の詩人肌から亡朝の末路に薤露の悲歌を手向けたろうが、ツァールの悲惨な運命を哀哭するには余りに深くロマーノフの罪悪史を知り過ぎていた。が、同時に入露以前から二、三の露国革命党員とも交際して渠らの苦辛や心事に相応の理解を持っていても、双手を挙げて渠らの革命の成功を祝するにはまた余りに多く渠らの陰謀史や虐殺史を知り過ぎていた。

二葉亭の頭は根が治国平天下の治者思想で叩き上げられ、一度は軍人をも志願した位だから、ヒューマニチーの福音を説きつつもなお権力の信仰を把持して、“Might is right”の信条を忘れなかった。貴族や富豪に虐げられる下層階級者に同情していても権力階級の存在は社会組織上止むを得ざるものと見做し、渠らに味方しないまでも呪咀するほどに憎まなかった。

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