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TORENDIA

若き日の思い出

本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

幼少期より植物に深い愛着を持つ著者が、十九歳で挑んだ石槌山への採集をはじめ、土佐各地の巡礼や福江島での調査など、長年にわたる過酷かつ情熱的な植物採集の足跡を綴る。案内人もなく山野を歩き、雨天や危険な野宿、採集品の整理に没頭する夜を越えて、いかに植物の知識と分布を学んでいったかを描く。学問への変わらぬ情熱を抱き続け、九十三歳を迎えた今もなお研究に邁進する姿勢と、その道程における数々の貴重な経験と回想を収める。

牧野富太郎

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🎧 若き日の思い出 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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一、雨の深山で採集

私は自分の学問に対してあまり苦労したことはなかった。今日まで何十年にわたる長い年月の間実に愉快に学問を続けてきて、ついに今日に及んだのであるが、平素その学問を特に勉強したようにも感じていないのは不思議である。

これは結局生まれつき植物が好きであったため、その学問があえて私に苦痛を与えなかったのであろう。

私は少年時代からたえず山野に出て植物を採集した。それが今日もなおやはり続いてその採集がとてもたのしい。

今から七十余年前、明治十三年の夏、私が十九歳の時、友人と二人で土予の国境近くにそびえる四国第一の高山、石槌山に採集に出かけた。まだその時分は洋服などなく日本着物であった。まず郷里佐川町の宅を出て数里先の黒森を越え、池川村で国境近くの山奥椿山の農家でとまった。それから国境の深山を通じる山道にさしかかるのだが、あいにく雨天であったため傘なしのずぶぬれで、遂に雨の石槌山にたどりつき、その絶頂に登った。さてそれからその山腹下の山村、黒川村でとまり、はじめてジャガイモを味わった。これは古くから同地でつくられてあったものでカウバウイモといっており形の小さい薯であった。翌日また雨をついて帰途についたが、山中で日が暮れ、人里遠き深林の中で野宿をしたが、夜半に雷が鳴ったり、雷光が光ったりとてもすごかった。夜明けにやっと前の椿山に帰りつき、遂に郷里に帰ってきたが、行きから帰りまで雨天で着物はぬれ大いに困った。それでもそのおかげでいろいろの植物を見たが、上の黒森では初めてオホナンバンギセルを採って、これを写生してきた。何といっても案内人もつれず、二人ではじめて国境の深山へ分け入ったが、よく道に迷わずにすんだ。

二、各地での採集

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