TRENDIA CLASSIC

一過程

島木健作

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夕やけが丘の上の空を彩りはじめた。暮れるにはまだ少し間のある時刻である。部屋のなかはだがもううす暗く深い靜けさにひそまりかへつてゐる。十人にちかい男たちがこの二階にありとは思へぬ靜けさである。風が出て來たらしい。寢靜まつた夜などはその遠吠えの音がきこえもする海の上を渡り、さへぎるもののない平地を走つてこの高臺の一軒屋にぢかに吹きつける二月の寒風である。はげしく吹きつけ、細目にあけた窓の隙間からはいる餘勢に壁に下げた何枚かのポスターがかさかさと鳴つた。人々は寒さにふるへ、しかしなにか縹渺としたおもひを誘はれながら、屋鳴りをさせて遠く吹き拔ける風の行方にぢつと耳を傾ける。――

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