本文へ移動
TORENDIA

一過程

本文約26,300字 ・ 読了時間 約53分

あらすじ(AIが作成しました)

丘の上の一軒家に集まった男たちは、開票の行方に張り詰めた緊張感を抱きながら待機している。候補者の当落を左右する重要な報告を待ちわびる彼らの胸には、これまでの活動に対する強い期待が膨らんでいる。やがて届いた報告により選挙結果が判明し、杉村は検挙の危機を乗り越えた仲間たちの機転に思いを馳せる。収監中の杉村は仲間からの差し入れを受け取り、組織の将来に想いを巡らせながら、新たな歩み出しを強く感じていく。

島木健作

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 37

夕やけが丘の上の空を彩りはじめた。暮れるにはまだ少し間のある時刻である。部屋のなかはだがもううす暗く深い靜けさにひそまりかへつてゐる。十人にちかい男たちがこの二階にありとは思へぬ靜けさである。風が出て來たらしい。寢靜まつた夜などはその遠吠えの音がきこえもする海の上を渡り、さへぎるもののない平地を走つてこの高臺の一軒屋にぢかに吹きつける二月の寒風である。はげしく吹きつけ、細目にあけた窓の隙間からはいる餘勢に壁に下げた何枚かのポスターがかさかさと鳴つた。人々は寒さにふるへ、しかしなにか縹渺としたおもひを誘はれながら、屋鳴りをさせて遠く吹き拔ける風の行方にぢつと耳を傾ける。――

島木健作の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本