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TORENDIA

芝居に出た名残星月夜

本文約27,500字 ・ 読了時間 約55分

あらすじ(AIが作成しました)

坪内博士の脚本「名残星月夜」の歌舞伎座での上演を機に、史料「吾妻鏡」の解釈と演出の在り方を論じる。登場人物の覚阿や尼御台の描かれ方を分析し、歴史的事実を基にしつつも、民譚的な色あいに縛られず、真の性格描写や人間関係の悲劇を追求する必要性を説く。作者が歴史に囚われず、観客の成熟に合わせ、形式的な手法から脱却した演劇を創り出すことを期待して綴る。

折口信夫

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あなたは確か、芝居の噂などは、あまりお嗜きでなかつた様に思ひます。併し、此だけは一つ、是非お耳に入れて置きたい、と思ふのです。そちらでも、東京の新聞は御覧になつて居ませう。坪内博士の「名残星月夜」が、五月狂言として、歌舞伎座に出たことは、もう御承知の事、と思ひます。あの脚本が、始めて中央公論に出た時、あなたも、坪内さんに宛てゝ、大分長いものを、お書きになりましたね。あれから、余程たちますので、その細目は、記憶に残つて居ません。が、大体は、事実と構想との関係と言ふ点だけを、中心にして言うて入らつしやつた様に思ひます。今、手もとに、あの頃の時事新報の切り抜きがありません。上野へ行けば、とつてあるだらう、と考へますが、又億劫がつて居る中に、印象を薄れさせて了ひ相ですから、ぶつゝけに書きます。若し、あなたも既に言はれたことを、自分の考へ見た様に、得意になつて書く様なことが出来はすまいか、とも思ひますが、そんなことがあつたら、あなたの考へが、わたしにも、具体せられて出て来た訣で、優越感をお持ち下さつて、さし支へはありません。

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