本文へ移動
TORENDIA

茂吉への返事

本文約4,500字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

アララギ派の歌風に対する批判や自作への反響を受け、自身の芸術的立場を綴る書簡。都会人である著者が、「力の芸術」や「ますらをぶり」という美学を追求するなかで直面する葛藤や、都会と田舎の環境差が文芸に与える影響を論じる。既成概念に囚われず、生長過程にある者が独自の歌境を切り拓こうとする決意を表明し、同人らへ対話の機会を求める。

折口信夫

速度
🎧 茂吉への返事 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 6

わたしはこゝで、駁論を書くのが、本意ではありません。そんなことをしては、忙しい中から、意見して下された、あなたの好意を無にすることに當りませう。其に第一、お申し聞けの箇條は、大體に於て、わたしの意表外に出たことではありませんでしたから。といふと、何だかあなたの語を輕しめる樣な、高ぶつた語氣を含んでゐる樣に、聞えるかも知れませんが、實の處、あなたのみならず同人の方々の、あゝいふ傾向の抗議のあることは、漠然と豫期しながら、あの百首の發表をしたのですから、あわたゞしく辯解しようとも思ひません。たゞ、世間にはわれ/\朋黨の意味をば取り違へて、個性を沒却した政治的の意味に、誤解してゐる人々も、ちよい/\見受けられます。それは「文藝上の朋黨」といふ小論文を書いたわたしにも、大分責任がある樣です。それで、御來旨に對して、わたし自身の生活に根ざした態度や、主張を明らかにして置くのに、却つて、都合のよい機會だ、と思つたのです。

最初にお願ひしたいのは、わたしはまだ生長の途中に在るのですから、ひとの思はくに氣をかねるなどいふ、餘裕が出來てゐない、といふことを考へに置いて頂くことです。

折口信夫の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本