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TORENDIA

呼子と口笛

本文約3,100字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

東京で活動する青年たちが社会変革を議論する熱狂と、テロリストの悲しみや同志の死への追悼を綴る。また、都市生活に疲れた者が故郷に抱く理想の住まいへの憧憬や、空を飛ぶ飛行機を仰ぎ見る少年の姿を通し、社会の現実に直面する人々の情熱や孤独、そして叶わぬ願いを叙情的に描く作品集である。

石川啄木

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🎧 呼子と口笛 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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はてしなき議論の後 一九一一・六・一五・TOKYO

われらの且つ読み、且つ議論を闘はすこと、

しかしてわれらの眼の輝けること、

五十年前の露西亜の青年に劣らず。

われらは何を為すべきかを議論す。

されど、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、

‘V NAROD!’と叫び出づるものなし。

われらはわれらの求むるものの何なるかを知る、

また、民衆の求むるものの何なるかを知る、

しかして、我等の何を為すべきかを知る。

実に五十年前の露西亜の青年よりも多く知れり。

されど、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、

‘V NAROD!’と叫び出づるものなし。

此処にあつまれるものは皆青年なり、

常に世に新らしきものを作り出だす青年なり。

われらは老人の早く死に、しかしてわれらの遂に勝つべきを知る。

見よ、われらの眼の輝けるを、またその議論の激しきを。

されど、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、

‘V NAROD!’と叫び出づるものなし。

ああ、蝋燭はすでに三度も取り代へられ、

飲料の茶碗には小さき羽虫の死骸浮び、

若き婦人の熱心に変りはなけれど、

その眼には、はてしなき議論の後の疲れあり。

されど、なほ、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、

‘V NAROD!’と叫び出づるものなし。

ココアのひと匙 一九一一・六・一五・TOKYO

われは知る、テロリストの

かなしき心を――

言葉とおこなひとを分ちがたき

ただひとつの心を、

奪はれたる言葉のかはりに

おこなひをもて語らむとする心を、

われとわがからだを敵に擲げつくる心を――

しかして、そは真面目にして熱心なる人の常に有つかなしみなり。

はてしなき議論の後の

冷めたるココアのひと匙を啜りて、

そのうすにがき舌触りに、

われは知る、テロリストの

かなしき、かなしき心を。

激論 一九一一・六・一六・TOKYO

われはかの夜の激論を忘るること能はず、

新しき社会に於ける‘権力’の処置に就きて、

はしなくも、同志の一人なる若き経済学者Nと

われとの間に惹き起されたる激論を、

かの五時間に亘れる激論を。

‘君の言ふ所は徹頭徹尾煽動家の言なり。’

かれは遂にかく言ひ放ちき。

その声はさながら咆ゆるごとくなりき。

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