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TORENDIA

甲賀三郎『琥珀のパイプ』序

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

文壇の作品が千遍一律化する中で、読者の刺激ある読み物への要求に応える探偵小説の意義と、その本格派である甲賀三郎の作家としての適性を論じる。試験管を扱う研究所の技師という側面を持つ甲賀は、科学的な知識と空想を融合させ、複雑な内容を簡潔に描く手腕を持つ。本書は、デビュー作から力作に至るまで、探偵小説の正道を歩む作者の多彩な才能を紹介し、その作品が読者に与える価値を説く序文を収める。

平林初之輔

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🎧 甲賀三郎『琥珀のパイプ』序 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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いわゆる文壇の小説家という人たちは、たいてい似たり寄ったりの生活をしている。したがってこれらの人たちが自分の身辺の出来事を報告した小説は、自然、千遍一律に流れやすい。近頃の文壇の作品には特にこの傾向が甚しくなってきた。そこで読者の方からは、何かもっと毛色の変わった、刺激の強い、興味のある読み物を要求してくるようになった。探偵小説は、こうした要求に答えるために生まれてきた新興文芸の一つであると見ることができよう。

生まれた事情が、そういうわけであるから、探偵小説の作家の方にも毛色の変わった人がずいぶん多い。本書の著者のごときも、変わった方の一人で、ペン・ネームだけを聞くと、戦国時代の武士か何かのようだが、どうして近代人のちゃきちゃき、窒素研究所のラボラトリーで、試験管をいじくることを職業としている工科出身の小壮有為なお役人さんである。

試験管と探偵小説、お役人さんと小説家、こう並べると雪と炭と並べるのと、大してかわりはないように考える浅はかな人があるかもしれんが、そういう人たちは、ファウストの作者が植物学者だったり、ミゼラブルの作者が政治家であったりしたことをご存じないのである。小説家の生活は原稿とペンとの間にのみ横たわると考えているのである。

私は本書の著者のような多方面な趣味と知識とをもっている作者にして、はじめて、空想と現実との両端をきわめ、詩の世界と科学の世界とをむすびつけることができるのであると思う。そして、このことは、まさに現下文壇の単調を破ることを使命の一つとして生まれてきた探偵小説の作者に、何よりも期待せねばならぬ条件ではなかろうか?

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