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TORENDIA

玉振時計の秘密

本文約7,700字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

会社員小野龍太郎は、支配人殺害を計画し、犯行時刻をごまかすため応接室の玉振時計を細工する。警察が証拠不十分で捜査に行き詰まる中、少年探偵塚原俊夫が現場の時計に残された痕跡と容疑者の供述の矛盾を指摘する。容疑者が犯行時刻を偽装した手口を論理的に解明し、事件の真相に迫る過程を描く。

小酒井不木

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一

これまで塚原俊夫君の取り扱った事件の中には、ずいぶん複雑なものもありましたし、また、きわめて簡単なものもありました。しかし、簡単といっても、俊夫君にとってその解決が容易であったというだけでして、事件そのものはかなりにむずかしいものが多かったのであります。

これから皆さんにお話ししようとする事件も、警視庁の人たちがもてあましたあげく、俊夫君によって、たちどころに解決された殺人事件であります。犯人はたしかにあの男であると推定されておりながら、その男がじゅうぶん計画をしてやったことでありますから、警視庁の人たちはその証拠をあげることができなかったのです。

けれども、どんなに巧妙に計画された犯罪でも、どこかに必ず手ぬかりがあるものです。この事件においても、やはり犯人は大きな手ぬかりをしていたのです。しかし、その手ぬかりを、警視庁の刑事たちは気がつかなかったのでして、ただ俊夫君だけが、それを容易に発見して、ついに犯人を自白せしめることができたのであります。

こういう探偵事件を紹介するには、俊夫君のところへ事件が依頼された当時から書きはじめて、俊夫君が解決するまでを、順序ただしく述べるのが普通ですけれど、今になっては、何もかも分かっているのですから、むしろ、私は犯罪の顛末を先に述べて、それから、俊夫君がそれを解決した模様を語ろうと思います。というのは、皆さんにも、この事件のどこに手ぬかりがあったかを、あらかじめ考えていただきたいと思うからであります。

二

日本汽船会社員小野龍太郎が、支配人の佐久間氏を殺そうと決心したのは、一月ほど前のことでありました。支配人といえば、主人も同様でして、かりそめにも主人を殺すということはそこにどんな理由があろうとも許すべからざる大罪悪であります。

しかし、龍太郎には、生まれながらに悪人の素質があったものか、いったん殺そうと思い立ったが最後、俗にいう悪魔に魅入られたとでもいいますか、どうしても、凶行を演じないではいられなくなったのであります。

さて、龍太郎がなにゆえに支配人を殺そうとしたかということは、この話にはあまり関係がありませんから、その記述を省きます。

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