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TORENDIA

大礼服の例外的効果

本文約1,000字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

大礼服を着て式場を控える校長は、数週間前に思想的な宣言に名を連ねた学生・富沢の行動に不安を抱いている。旗手として校旗を掲げる富沢が、式場で突飛な行動に出るのか、それとも本心から校旗を護るのか。校長は富沢の言動の真意を測りかねながらも、若者の危うい美しさに圧倒される。雪が降り積もる学校を舞台に、校旗を巡る緊張感漂う儀式直前の様子と、複雑な思惑が交錯する人間模様を描く。

宮沢賢治

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🎧 大礼服の例外的効果 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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こつこつと扉を叩いたのでさっきから大礼服を着て二階の式場で学生たちの入ったり整列したりする音を聞きながらストウヴの近くできうくつに待ってゐた校長は 低く よし と答へた。

旗手が新らしい白い手袋をはめてそのあとから剣をつけた鉄砲を持って三人の級長がはいって来た。校長は雪から来る強い反射を透して鋭くまっさきの旗手の顔を見た。それは数週前いきなり掲示場にはりつけられた〔〕われらはわれらの信ぜざることをなさず といった風の宣言めいたものの〔〕十幾人かの聯名のその最后に記された富沢であった。

それについてのごたごたや調査で校長はひどく頭を悩ました。

ところがいま富沢は大へんまじめな様子である。それは校旗を剣つきの鉄砲で護るわけがちゃんとわかったやうでもありまた宣言通り式場へ行ってからいきなり校旗を抛げ出して何か叫び出すつもりのやうでもありどうも見当がつかなかった。

みんなはまっすぐにならんで礼をした。

校長はちょっとうなづいてだまって室の隅に書記が出して立てて置いた校旗を指した。

富沢はそれをとって手で房をさばいた。校長はまだぢっと富沢を見てゐた。富沢がいきなり眼をあげて校長を見た。校長はきまり悪さうにちょっとうつむいて眼をそらしながら自分の手袋をかけはじめた。その手はぶるぶるふるえた。校長さんが仰るやうでないもっとごまかしのない国体の意義を知りたいのです と前の徳育会でその富沢が云ったことをまた校長は思ひ出した。それも富沢が何かしっかりしたさういふことの研究でもしてゐてじぶんの考へに引き込むためにさう云ってゐるのか全く本音で云ってゐるのか、或は早くもあの恐ろしい海外の思想に染みてゐたのかどれかもわからなかった。卒業の証書も生活の保証も命さへも要らないと云ってゐるこの若者の何と美しくしかも扱ひにくいことよ 扉がまたことことと鳴った。

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