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TORENDIA

夢

本文約440字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

ある女を殺そうと決意して坂を登る男が、夜店の古本屋の穏やかな笑顔に心和みながらも、翌日その老人を衝動的に刺してしまう原民喜の掌編。

原民喜

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🎧 夢 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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彼はその女を殺してしまはうと決心しながら、夜更けの人足も薄らいだK――坂を登ってゐた。兇器にするか、何にするか、手段はまだ考へてゐなかった。が、その烈しい憤怒だけで、彼は女の首を完全に絞めつけることが出来さうだった。

ふと彼は考への途中で、夜店の古本屋の爺さんを何気なしに眺めた。爺さんは一人ほくほくしながら店をしまってゐた。人のいい、実に和やかな笑顔が彼を見た。爺さんは今何が嬉しいのだらう、しかし彼も同時に何だか知ら胸の裡が嬉しくなった。彼は穏かに下宿に帰って睡た。

その夜、彼は爺さんの夢を見た。爺さんはニヤニヤ笑ひながら、「俺は知ってるぞ、君はあの女を殺す気だね。」と何度も繰返し繰返し云った。目が覚めると、彼の脊筋はじっとりと冷汗に濡れてゐた。

翌日の夕方、彼はまたふらふらとK――坂を登って行った。恰度夜店が出る時刻で、昨日の爺さんも同じ処で古本を並べてゐた。彼は爺さんを一目見るや否や、わーと泣き出したい衝動に駆られた。が、兇器は夢中で爺さんの脇腹を抉ってゐた。

完

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