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TORENDIA

女の温泉

本文約5,500字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

伊香保、塩原、別府など、各地の温泉地を巡り、女性にとっての適性を論じる。伊香保の利便性や景色、塩原の渓流の美しさ、別府の多様な楽しみ方を具体的に挙げる。また、伊豆や北国の温泉についても、泉質や季節ごとの特徴を交えて紹介する。都会での家庭生活で疲弊した女性たちが、自然の中で穏やかな時間を過ごし、心身の癒やしを得ることの意義を綴る。

田山録弥

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🎧 女の温泉 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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一

女に取つての温泉場――関東では伊香保が一番好いといふのは、昔からの定論であるらしかつた。果してさういふ風にあの湯が効目があるか何うか。それは知らないけれども、細君同伴で一まはりも湯治して来れば、屹度子供が出来るなどゝ言つたものであつた。兎に角あそこは女に取つて好い温泉場であるに相違なかつた。第一、行くのに便利であつた。上野から足、地を踏まずに行く事が出来た。それに、山も大して深くはなかつた。女が馴れ親しむのには丁度好かつた。

散歩区域としても、物聞山があつた。湯元があつた。更に遠く榛名湖があつた。夫婦お揃ひで可愛い子供を伴れて駕籠か何かで路草を食ひながら、春ののどかな日影に照されつゝ、あのスロオプをのぼつて行くさまは、ちよつと絵のやうな感じをあたりに与へた。駕籠の中の細君は、道々採つた蕨をハンケチに巻いて持つてゐて、駕籠が休む度に、そこから下りて、あたりの草原の中を頻りに探しなどした。『さうですね。あそこの蕨はちよつと面白いですね。私、榛名に往く途中に手に持てないほど採りましたからね。さう五月の初でしたね。あの時分はあそこは何とも言へませんね。のんきで、暖かで、のんびりして、本当に温泉場に来たやうな気がしました』かう私の知つてゐる細君は云つた。

あの明るい五月の新緑! 何も彼も新しく生き返つた様なあの日の光! それに林の中に透き通る様な駒鳥の高い囀! 実際、春の温泉場としては、あそこに越すところはない様な気がした。否そればかりではなかつた。秋の初茸狩がまた面白かつた。それはあの電車の伊香保に着かうとするあたりの左側の松山に多く出るのであるが、春の蕨狩りに比して、決して劣らないだけの興味があつた。女でも子供でも時の間にかごに一杯になるほど、初茸を採つて帰つて来ることが出来た。

それにあの眺望――濶々としたあの谷と山との眺め、雲の眺め、赤城山の大きな姿を前にした形は、家庭の煩瑣にのみ精神を疲らせられた細君達に取つて、どれほど生き返つた心持を漲らせる対象となるか知れなかつた。

二

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