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TORENDIA

蝙蝠の歴史

本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

古今の伝説や民族的な解釈を辿りながら、蝙蝠という生物にまつわる伝承と象徴性を綴る。十字架上のキリストとの関わりやサタンによる変身譚から説き起こし、地域ごとに異なる寿命の数え方や、中国における福の象徴としての側面を紹介する。さらには日本での捉え方に触れ、古来より人々がその存在に抱いてきた多様なイメージと、実在の生物としての淡々とした考察を重ね合わせることで、蝙蝠という存在の複雑な相貌を浮き彫りにする。

片山廣子

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🎧 蝙蝠の歴史 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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古いゲエルの伝説に出てくる蝙蝠の話を読むと、昔の昔から彼はきらはれものであつたらしい。蝙蝠にはいろいろの名があつたらしいが「黒い放浪者」といふのが一ばん詩的な名だとその伝説の筆者は書いてゐる。

世界の初めごろ蝙蝠は川蝉のやうに青い色で、胸は燕のやうに白く、そしてうるほひ深い大きな眼を持つてゐたから、その眼の色とひらめく羽根のうごきとで「きらめく火」といふ名でもあつたが、世の中が移り変つてその「きらめく火」が「黒い放浪者」とまでなつてしまつた。

キリスト「御苦難」の日の出来事である。一羽の駒鳥が飛んで来て十字架の上にくるしむキリストの手から足から茨の刺を抜かうとして、キリストの血で小さい胸を赤く濡らしてゐるとき、蝙蝠がひらひらその辺を飛び廻つて、「何と私は美しいだらう! 私が飛ぶのは早いだらう!」と自慢らしく鳴いた。キリストはお眼をふり向けて蝙蝠をごらんなされた。すると潮が引いてゆく時のやうに、青と白の色が蝙蝠の体から消えて行つた。蝙蝠はめくらになり黒い体になつてぱたぱた飛んで、折しも迫る夜の中にとび入り、暗黒の中に永久に溺れてしまつた。それからは黄昏と夜の世界にだけ彼はあてもなく旋回しながら飛びまはり「なんと私は眼が見えない! 私のみにくさを見てくれ!」と、ほそいほそいかすれた声で鳴くのである。

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