画工と幽霊
本文約7,200字 ・ 読了時間 約15分
あらすじ(AIが作成しました)
英国の貴族の別荘に避暑で訪れた画工のエリックは、夜中に室内が明るくなり、恐ろしい形相の貴婦人が現れる怪異を二晩続けて目撃する。その貴婦人は、かつて同じ窓から転落死した若者の継母の肖像画と瓜二つであった。画工はその体験を絵に描き上げ、後に所有者である貴族にこの不可解な実体験を語る。百年前にこの世を去った女性の怨念が残る窓は、この告白を受けて取り壊されることとなる。
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千八百八十四年、英国倫敦発刊の某雑誌に「最も奇なる、実に驚くべき怪談」と題して、頗る小説的の一種の妖怪談を掲載し、この世界の上には人間の想像すべからざる秘密又は不思議が存在しているに相違ない、これが即ち其の最も信ずべき有力の証拠であると称して、その妖怪を実地に見届けた本人(画工エリック)の談話を其のまま筆記してある。原文は余ほど長いものであるから、今その要を摘んで左に紹介する。で、その中に私とあるのは、即ち其の目撃者たる画工自身の事だ。
今年の七月下旬、私は某友人の紹介で、貴族エル何某の別荘へ避暑かたがた遊びに行った事がある、その別荘は倫敦の街から九哩ばかり距れた所にあるが、中々手広い立派な邸宅で、何さま由緒ある貴族の別荘らしく見えた。で、私が名刺を出して来意を通じると、別荘の番人が取あえず私を奥へ案内して、「あなたが御出の事は已に主人の方から沙汰がございました、就ましては此の通りの田舎でございますが、悠々御逗留なすって下さいまし」と、大層鄭重に接って呉れたので、私も非常に満足して、主人公はお出になっているのかと尋ねると、「イエまだお出にはなりませんが、当月末にはお出なさるに違ありません」との事。それから晩餐の御馳走になって、奥の間の最上等の座敷へ案内されて、ここを私の居間と定められたが、こんな立派な広いお座敷に寝るのは実に今夜が嚆矢だ、併し後で考えるとこのお座敷が一向に有難くない、思い出しても慄然とするお座敷であったのだ。