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TORENDIA

人魂火

本文約910字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

通油町に住む気丈な後家と息子。夏の夜、軒先に人魂が目撃された直後、この家では仏壇の位牌や息子の盆栽がすべて倒れる怪異が起こる。不穏な気配を察して祖母のもとを訪ねた母親に対し、近所の豆腐売りは、浜町河岸で共に夜網をしていた息子が突然姿を消したことを告げる。忽然と行方不明になった息子をめぐる騒動と、その後の不可解な出来事を回想形式で綴る。

長谷川時雨

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🎧 人魂火 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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これは私の父が、幼いころの気味の悪るかったことという、談話のおりにききましたことです。場処は通油町でした。祖母が目をかけてやっていた、母子二人世帯の者が、祖母の家の塀外に住んでいた、その息子の方のことです。母親という人は後家で通して来たので、名代の気丈なものだったそうですが、ある夜、もうかれこれ更けて、夏の夜でしたが、涼み台もしまおうという時分に、その後家の家の軒前へ人魂がたしかに見えたと、近所の者が騒ぎだしたのです。私の父も見たともうしました。するとその母親が、息子が留守だと思って馬鹿にすると、大変家のなかから怒ったそうで御座いました。それでその折は過てしまったのでしたが、翌朝になると祖母の処へ、その母親が顔色をかえてきて言うには、昨夜あれから間もなく、外で大変な風の音がしたと思うと、仏壇の位牌もなにもかも、みんな倒れました、それがいちどきにでしたから気になって、夜の明けるのを待兼てそこらを見ますと、息子の大切にしていた鉢植――盆栽ものが、みんな倒ている。そればかりならまだしも、大きな音がして戸へもののぶつかった窓から、仏壇へゆく途のものは、なにもかもみんな倒れているというので、母親は息子の帰らないのを、大変気にして祖母のところへ来たのですが、息子はいつも夜どまりをしつけているので、まさかとは頼みにもしていたのですが、ところが直近所の料理店へ、例も来る豆腐売りがぼんやりと荷物ももたずに来て、実は昨夜、御近所の何さんに浜町河岸で、私が夜網にゆく道で逢ったところが、なんでも一所にゆくというので出かけて、だんだん夜が更けてから、ふと気がつくと、今までそこに立って網をもっていた何さんの姿がなくなっている。どうした事かと一生懸命に呼びもしたり、探ねあかしたが、かいくれ行方がしれぬので、まったく死んだのか、それとも自分がどうかしているのかと思って、お宅まで問合せに来たと語ったのから、大騒ぎになったともうします。全く水に落て死んだので、その日死体があがったと言います。父が見に行きました時、下むきになっていましたが、丁字髷は乱れて、小肥りの肩から、守袋の銀ぐさりをかけていたということで御座います。

完

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