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TORENDIA

狸と俳人

本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

伊勢の蓮台寺村に住む俳人・澤田庄造は、独り身の気楽な隠居暮らしを送っていた。ある晩秋の夕暮れ、窓の外に現れた一匹の古狸と交流を深め、やがてその狸を家で飼うようになる。この奇妙な友情は村人の知るところとなり、狸は庄造の病床にも寄り添う。庄造がこの世を去った後、彼の墓前に現れては消えた謎の女の姿から、村人たちはその狸の恩義を感じ、村では狸を傷つけないという不文律が長く守られることとなる。

田中貢太郎

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🎧 狸と俳人 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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安永年間のことであった。伊勢大廟の内宮領から外宮領に至る裏道に、柿で名のある蓮台寺と云う村があるが、其の村に澤田庄造という人が住んでいた。

庄造は又の名を永世と云い、号を鹿鳴と云って和歌をよくし俳句をよくした。殊に俳句の方では其の比なかなか有名で、其の道の人びとの間では、一風変ったところのある俳人として知られていた。

庄造は煩雑なことが嫌いなので、妻も嫁らず時どき訪れて来る俳友の他には、これと云って親しく交わる人もなく、一人一室に籠居して句作をするのを何よりの楽しみにしていた。

某年の晩秋の夕のことであった。いつものように渋茶を啜りながら句作に耽っていた庄造が、ふと見ると窓の障子へ怪しい物の影が映っていた。庄造は不審に思って衝と窓の障子に手をかけたが、何人か人だったら気はずかしい思いをするだろうと思ったので、其のまま庭前へ廻って窓の外を見た。窓の外には一疋の古狸が蹲まっていたが、狸は庄造の姿を見ても別に逃げようともしないのみか、劫ってうれしそうに尻尾を掉るのであった。庄造は興あることに思って、家の中から食物を持って来て投げてやった。と、狸は旨そうにそれを食ってから往ってしまった。

其の翌日の夕方も庄造が書見をしていると、又窓の外へ狸が来て蹲まった。庄造は又食物を持って出て、狸の頭を撫でたりしたが、狸はちっとも恐れる風がなかった。

其の狸は其の翌晩もやって来た。庄造は待ちかねていて座敷へ呼び入れた。狸は初めの間は躊躇している様子であったが、やがて尻尾を掉りながらあがって来た。そして、庄造が書見をしている傍に坐って一人で遊んでいたが、暫らくすると淋しそうに帰って往った。

それから狸は毎晩のようにやって来た。庄造は淋しい一人生活の自分に良い友達が出来たような気がしてうれしかった。狸は庄造に馴れて庄造が帰れというまで何時まででも遊んで往くようになった。

某夜狸がいつものように庄造の傍で遊んでいるうちに戸外は大雪になった。庄造は積った雪を見て狸を帰すのが可哀そうになった。で、狸の頭を撫でながら、

「おい、たぬ公、今夜は雪だから泊って往け」

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