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TORENDIA

地熱

本文約42,600字 ・ 読了時間 約86分

あらすじ(AIが作成しました)

炭坑町の丘を舞台に、臨時工夫として過酷な労働環境に身を置く男たちと、彼らを取り巻く女たちの生活を描く。恋人の香代は離れた村に預けた子を想い、日々の貧しさと孤独に苛まれる。そこへ数年ぶりに戻った留吉は、香代と子供を引取り、この地で地道に暮らす決意を語る。周囲の仲間たちは彼らの再出発を祝福し、労働条件改善という新たな連帯を予感させる中で、香代は留吉のために食事の支度を始める。

三好十郎

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1 炭坑町の丘

(開幕前に、上手から下手奥へ列車が通過する轟然たる響が近づき、遠ざかつて行く。開幕後も音は残る。

町はづれの丘。上手が斜めに切通しになつてゐて、私設鉄道の線路の一部。線路に添つて街道。その間に木柵。――炭坑地特有の、何から何まで黒い〔風景〕。晴れた夕陽の空。遠い山脈。秋。

切通しを見おろす丘の上に此方を向いて腰をおろし、遠くに視線をやつているお香代。胸の辺で何かしてゐる。

……間。

近づいて来るトロツコの音と元気一杯の男声二人の唄声。

(木挽歌)

『やーれ土方稼業と、コラ空飛ぶ鳥は、どこのいづくで果てるやら、チートコパートコ』

線路に現れて来るトロツコを押してゐる二人の工夫。トロツコにはトンネル工事の材料が積んである)

辰造 おゝ、此の辺でチヨイと一服して行かうぜ。

金助 だつて現場ぢや、みんな待つてゐるよ。

辰造 いいつて事よ、どうせ今日も又残業だ。たまには骨休めもさしてやらなきや、たまるもんか。俺達が行くのが遅くなりや、そいだけ休んで居れるんだ。ハハハ、気を利かすなあ、かう言ふ所だ。

金助 しかし監督が又怒鳴るぜ。

辰造 怒鳴らしときやいいぢや無えか。あの野郎、こちとら臨時工夫をまるで人間扱ひにしねえんだからな、ナメた畜生だよ。

金助 だけんど、あの浸水のひどさぢや、責任持つて現場に出てりや、イライラもするよ。あいだけの人間が夜の九時迄働いて、一日にやつとコンクリー流し込みが一尺と進まねえんだからな。

辰造 そんな事俺達が知るか。会社で無理にもあすこにトンネル通さうと言ふんだから、会社の責任だい。(先刻から煙草をくはへて、何度もマツチをすつてゐる)チツ! マツチまでが附きくさらねえ!

金助 (自分のマツチを出して)おいよ、此処にあるぜ(するが附かぬ)こいつも駄目だ。

辰造 一日ビシヨ濡れになつてゐて、そいで煙草も吸へなきや、世話あ無えや。こん畜生! (マツチ箱を丘の方へビユツと投げる。それが香代の肩に当る)

金助 (マツチを見送つた眼で香代に気がつく)あ、お香代さん!

香代 ……? (夢を見てゐるやうな眼附)

辰造 香代ちやんぢや無えか? どうしたんだ、こんな所で?

香代 ……どうしたの?

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