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TORENDIA

岡倉先生の思い出

本文約1,900字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

岡倉天心全集の刊行を機に、かつて文学部でその講義を聴いた筆者が、恩師の思い出を綴る。美術史の知識のみならず、芸術への愛と作品の味わい方を学生に伝えた講義の様子を振り返る。シナの玉や薬師寺の三尊の解説で見せた独特の所作や言葉を通じ、いかにして学生の内にある芸術への感受性を喚起したかを描く。また、排仏毀釈への憤りを通じて学生の眠れる精神を揺り動かした、教育者としての本質的な側面を回想する。

和辻哲郎

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🎧 岡倉先生の思い出 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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今度岡倉一雄氏の編輯で『岡倉天心全集』が出始めた。第一巻は英文で発表せられた『東洋の理想』及び『日本の覚醒』の訳文を載せている。第二巻は『東洋に対する鑑識の性質と価値』その他の諸篇、第三巻は『茶の書』を含むはずであるという。岡倉先生の主要著作が英文であったため在来日本の読者に比較的縁遠かったことは、岡倉先生を知る者が皆遺憾としたところであった。今その障害を除いて先生の天才を同胞の間に広めることは誠に喜ばしい企てであると思う。

岡倉先生が晩年当大学文学部において「東洋巧芸史」を講ぜられた時、自分はその聴講生の一人であった。自分の学生時代に最も深い感銘を受けたものは、この講義と大塚先生の「最近文芸史」とである。大塚先生の講義はその熱烈な好学心をひしひしと我々の胸に感じさせ、我々の学問への熱情を知らず知らずに煽り立てるようなものであったが、それに対して岡倉先生の講義は、同じく熱烈ではあるがしかし好学心ではなくして芸術への愛を我々に吹き込むようなものであった。もちろん先生は芸術への愛を口にせられたのではない。ただ美術史的にさまざまの作品について語られたのみである。しかし先生がある作品を叙述しそれへの視点を我々に説いて聞かせる時、我々の胸にはおのずからにして強い芸術への愛が湧きのぼらずにはいなかった。一言に言えば、先生は我々の内なる芸術への愛を煽り立てたのである。これはあの講義の事実的内容よりもはるかに有意義なことであったと思う。

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