TRENDIA CLASSIC

西航日録

井上円了

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序言

本書は余が欧米漫遊の途中、目に触れ心に感じたることをそのまま記して、哲学館出身者および生徒諸子に報道したるものにして、これを別冊に刻して世間に公にすることは、最初より期せしところにあらず。しかるに、このごろ哲学館同窓会諸氏、強いてこれを印刷せんことをもとめらる。余、ついにその請いをいれて、これを同窓会に寄贈することとなす。書中記するところの詩歌のごときは、抱腹に堪えざるもの多きも、笑うもまた肺の薬なりと聞けば、読者の肺を強くするの一助ともならんと思い、これを削除せずしてそのまま印刷に付することとなせり。一言もって巻首に冠す。

明治三十六年十一月二十日井上円了 しるす [#改ページ]

西航日録

一、再び西航の途へ  明治三十五年十一月十五日、余再び航西の途に上らんとし、午前八時半、新橋を発す。ときに千百の知友、学生の余が行を送るありて、汽笛の声は万歳の声にうずめられ、秋雨蕭々のうちに横浜に着す。ときに拙作二首あり。

留別

力学多年在帝都、始知碌碌読書愚、欲扶後進開文運、再上航西万里途。

(学問の修得につとめて多くの歳月を東京ですごし、はじめて役にもたたぬ読書の愚かさを知った。わが国を後進より救い学問・文化の気運をさかんにしようと願い、ふたたび西方への航路万里の途についたのであった。)

新橋発車

決意一朝辞帝京、学生千百送吾行、鉄車将動煙先発、万歳声埋汽笛声。

(意を決してこの日東京に別れを告げる。ときに学生千余人がわが旅立ちを送ってくれた。汽車の動かんとするに煙がまず噴き上がり、万歳を叫ぶ声が発車の汽笛をかき消すのであった。)

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