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TORENDIA

ハイデッゲル教授の想い出

本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

ハイデルベルクからマールブルクへ移った著者が、ハイデッゲル教授を訪問し、アリストテレス研究や歴史哲学の学び方について教えを受ける様子を綴る。教授の講義におけるテキスト解釈の手法や、書斎の様子、そして芸術論へと傾倒していく教授の心境を通じて、哲学と政治の関わりや学びのあり方を考察する随筆である。

三木清

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🎧 ハイデッゲル教授の想い出 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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私がハイデルベルクからマールブルクへ移ったのとちょうど同じ頃にハイデッゲル氏はフライブルクからマールブルクへ移って来られた。私は氏の講義を聴くためにマールブルクへ行ったのである。

マールブルクに着いてから間もなく私は誰の紹介状も持たずにハイデッゲル氏を訪問した。学校もまだ始まらず、来任早々のことでもあって、ハイデッゲル氏は自分一人或る家に間借りをしておられたが、そこへ私は訪ねて行ったのである。何を勉強するつもりかときかれたので、私は、アリストテレスを勉強したいと思うが、自分の興味は日本にいた時分から歴史哲学にあるのでその方面の研究も続けてゆきたいと述べ、それにはどんなものを読むのが好いかと問うてみた。そこでハイデッゲル教授は、君はアリストテレスを勉強したいと云っているが、アリストテレスを勉強することがつまり歴史哲学を勉強することになるのだ、と答えられた。そのとき私には氏の言葉の意味がよくわからなかったのであるが、後に氏の講義を聴くようになって初めてその意味を理解することができた。即ち氏に依れば、歴史哲学は解釈学にほかならないので、解釈学がどのようなものであるかは自分で古典の解釈に従事することを通じておのずから習得することができるのである。大学での氏の講義もテキストの解釈を中心としたもので、アリストテレスとか、アウグスティヌスとか、トマスとか、デカルトとかの厚い全集本の一冊を教室へ持って来て、それを開いてその一節を極めて創意的に解釈しながら講義を進められた。私は本の読み方をハイデッゲル教授から学んだように思う。

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