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TORENDIA

書物の倫理

本文約3,100字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

日本の出版物における箱入りの慣習や書物の取り扱いに対する考察から始まり、書物を単なる所有物ではなく道具として使いこなすことの重要性を説く。さらに、文庫の構成に表れる所有者の性格、出版業者が持つべき個性や創意、そして愛読書と古典の意義について論じる。古本屋という場を、読者の鑑識眼を養い書物の価値が顕現する場所と位置づけ、読み手、作り手双方の倫理を問い直すエッセイ。

三木清

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🎧 書物の倫理 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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洋書では滅多にないことだが、日本のこの頃の本はたいてい箱入になっている。これは発送、返品、その他の関係の必要から来ていることだろうが、我々にはあまり有難くないことのように思う。だいいち本屋の新刊棚の前に立ったとき、そのためにたいへん単調な感じを受ける。どの本もどの本も皆一様に感じられる。どれかを開けて内容を調べてみようとしても、箱があるのは不便だ。開いて見て元の箱に納めようとすれば、本には薄い包紙が着けてあるので、私のような不器用者にはなかなかうまく這入らず、ともすればその包紙を破ってしまう。他人の商品を毀損したようで何となく気持が悪い。店の者が横で睨附けていはしないかと思わず赤い顔をすることもある。そういうわけで箱に這入った本は本屋にせっかく陳列してあっても不精と遠慮とから開けてみないことが多い。内容を見もしないで表題だけで本を買うわけにもゆかないから、箱のことは出版屋の方で何とか工夫はないものであろうか。本を買って持って帰って読む段になると、私などはたいていの場合箱は棄ててしまう。不経済な話だ。

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