しっぺい太郎
本文約5,700字 ・ 読了時間 約12分
あらすじ(AIが作成しました)
諸国を巡礼する六部は、美作国の村で山に住む神に娘を人身御供として捧げる風習を知る。神の正体を突き止めるため社へ向かった六部は、化け物がしっぺい太郎という存在を恐れていると知る。丹波国へ探しに出た六部は、それが猟師の飼い犬の名であることを突き止め、借り受けて村へ戻る。長持に身を隠しお社に乗り込んだ六部と犬は、夜中に現れた猿の化け物たちと対決し、長年の村の悲劇を終わらせる物語である。
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一
むかし、諸国のお寺を巡礼して歩く六部が、方々めぐりめぐって、美作国へまいりました。だんだん山深く入っていって、ある村の中に入りますと、何かお祝い事があるとみえて、方々でぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ、もちをつく音がしていました。
するとその中で一けん、相応にりっぱな構えをした家が、ここだけはきねの音もしず、ひっそりかんと静まりかえっていました。家の中からは、かすかにすすり泣きをする声さえ聞こえてきました。
六部は「はてな。」と首をかしげながら、そのまま通りすぎていきますと、村はずれに一けんの茶店がありました。六部は茶店に休んで、お茶を飲みながら、おばあさんを相手にいろいろの話をしたついでに、
「おばあさん、おばあさん。この村には何かお祭りでもあるのかね。だいぶにぎやかなようじゃあないか。だがその中で一けん、大そう陰気に沈みこんだ家があったが、あれは親類に不幸でもあったのかね。」
と聞きました。するとおばあさんは、お茶盆を手に持ったまま、
「まあ、それはこういうわけでございますよ。あなたは方々の国々をお回りですから、たぶん御存じでしょうが、この村でも年々、それ、あそこにちょっと高い山がございましょう、あの山の上の神さまに、人身御供を上げることになっているのでございます。」
こういって、向こうにこんもり森のしげった山を指さしました。
「ふん、それでなぜお祝いをするのだろう。」
と六部はたずねました。