とうげの茶屋
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あらすじ(AIが作成しました)
峠の中ほどで茶屋を営む老人は、通りかかる客をもてなしながら、一人穏やかな日々を過ごしている。ある日、村では狐のいたずらが噂され、さらに来年には峠にバスが通るという話が持ち上がる。客足が途絶えることを懸念し不安に駆られる老人だが、冬の嵐の中、子供を連れた旅の女を助けたことをきっかけに、損得を超えて世の利便と人々の幸せを願うようになる。
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とうげの、中ほどに、一けんの茶屋がありました。町の方からきて、あちらの村へいくものや、またあちらの村から、とうげを越して、町の方へ出ていくものは、この茶屋で休んだのであります。
ここには、ただひとり、おじいさんが住んでいました。男ながら、きれいにそうじをして、よく客をもてなしました。お茶をいれ、お菓子をだしたり、また酒を飲むものには、あり合わせのさかなに、酒のかんをして、だしました。おじいさんは、女房に死なれてから、もう長いこと、こうしてひとりで、商売をしていますが、みんなから、親しまれ、ゆききに、ここへ立ち寄るものが、多かったのであります。おじいさんは、いつも、にこにこして、だれ彼の差別なく、客をもてなしましたから、だれからも、
「おじいさん、おじいさん。」と、いわれていました。
おじいさんも、こうして、いそがしいときは、小さなからだをくるくるさして、考えごとなど、するひまはありませんが、人のこないときは、ただひとり、ぼんやりとして、店さきにすわっているのでした。すると、いつとなしに、眠気をもよおしていねむりをするのでした。
もっとも、だんだん年をとると、こうして、ひとりでじっとしているときは、目をあけても、ふさいでも、おなじように、いつも夢を見ているような、また、うつつでいるような、ちょうど酒にでも酔っているときのような、気持ちになるのです。
おじいさんも、このごろ、こんなような日がつづきました。戸外は、秋日和で、空気がすんでいて、はるかのふもとを通る汽車の音が、よくきこえてきます。どこか、森で鳴く、鳥の声が、手にとるように、耳へとどきます。
おじいさんは、汽車の音がかすかになるまで、耳をすましていました。やがて、あちらの山の端を、海岸の方へまわるとみえて、一声汽笛が、高く空へひびくと、車が音がしだいにかすかに消えていきます。
「もう、汽車の窓から、沖の白い浪が見えろるだろう。」
おじいさんは、自分が、その車に乗っているような気でいました。