夕暮の窓より
本文約1,900字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
夕暮れの街で、華やかな音色に心躍らせる人や孤独に沈む人、そして都会から離れた田舎で自然とともに質朴に暮らす人々がいる。様々な生活を営む人々の姿を眺めながら、幸福や生存の意義について思索を巡らせる。時間や空間という概念を超え、人生を真に感じ、考え、味わうことの重要性を綴り、主観の中に宿る真理や、あきらめ惑わずに生きることの尊さを説く随筆である。
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光線の明るく射す室と、木影などが障子窓に落ちて暗い日蔭の室とがある。
其等の、さま/″\の室の中には生活を異にし、気持を異にした、いろ/\な、相互いに顔も知り合わないような人が住んでいる。
賑かな町に住んでいる人は、心を浮き立てるような笛や、ラッパの音や、楽隊の音色や、または、夕暮方の電車の音などに耳を傾けて、あてない空想に耽ったり、また、華かな瓦斯の燈火のつく頃の夜の楽しさを思うて、気がうき/\として、隣りや、向い筋から聞えて来る琴や、三味線の音色に、何んとなく、夢を見るようなうっとりとした気持になって、自分も、手にしていた紅い布を傍にやってほつれ髪を掻きあげながら、ほうっとした顔付で三味線にあわせて口ずさむ女もあろう。
また、さびしい、室の裡に物思いに沈んで、眤と下を見つめて、何事をか考えている、青い顔の年老った女があろう。窓の障子の上には、夕暮方の光線がぼんやりと染んで、頭には幾分か白髪も交って頬に寄った小皺が目立って見える……室の中には、傷いた道具が僅かばかり並べられてあるばかりで、目を惹くような貴重のものも見当らない。女は、この広い世界にたゞ独り見捨てられた人のように頼りない様子である。
一日をうか/\と、おもしろおかしく、何事をも深く心にとゞめ考えもせずに暮らしているものがある。また、悲しみに沈んでしみじみとはかない身の上を思いわずらうものがある。しかも、同じい夕暮の一時を、いろ/\の室の裡に、さま/″\の人が異った気持を抱いて、異った生活をしている。