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TORENDIA

寒い夜の自我像

本文約530字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

冷え込む冬の夜の情景を背景に、自身の内に抱える弱さと、それに翻弄される自己の姿を綴る詩集である。世俗の悲しみや他者の無自覚な振る舞いに触れつつ、安易な幸福に逃げず、自己を売らずに生きることの困難さを吐露する。神への救いを求め、言葉にすることでしか自分を保てないもどかしさを抱えながら、確固たる自分自身として生き抜くための日光と仕事、そして内面の静寂を切実に希求する魂のありようを描く。

中原中也

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🎧 寒い夜の自我像 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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きらびやかでもないけれど、

この一本の手綱をはなさず

この陰暗の地域をすぎる!

その志明かなれば

冬の夜を、われは嘆かず、

人々の憔燥のみの悲しみや

憧れに引廻される女等の鼻唄を、

我が瑣細なる罰と感じ

そが、わが皮膚を刺すにまかす。

蹌踉めくままに静もりを保ち、

聊か儀文めいた心地をもつて

われはわが怠惰を諫める、

寒月の下をゆきながら、

陽気で坦々として、しかも己を売らないことをと、

わが魂の願ふことであつた!……

2

恋人よ、その哀しげな歌をやめてよ、

おまへの魂がいらいらするので、

そんな歌をうたひだすのだ。

しかもおまへはわがままに

親しい人だと歌つてきかせる。

ああ、それは不可ないことだ!

降りくる悲しみを少しもうけとめないで、

安易で架空な有頂天を幸福と感じ做し

自分を売る店を探して走り廻るとは、

なんと悲しく悲しいことだ……

3

神よ私をお憐み下さい!

私は弱いので、

悲しみに出遇ふごとに自分が支へきれずに、

生活を言葉に換へてしまひます。

そして堅くなりすぎるか

自堕落になりすぎるかしなければ、

自分を保つすべがないやうな破目になります。

神よ私をお憐れみ下さい!

この私の弱い骨を、暖いトレモロで満たして下さい。

ああ神よ、私が先づ、自分自身であれるやう

日光と仕事とをお与へ下さい!

(一九二九・一・二〇)

完

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