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TORENDIA

自信の無さ

本文約610字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

長與善郎から現代新人の通性を指摘された著者が、自身の作品を例に挙げつつ、創作活動における根本的な自信の欠如について論じる。決して怠惰ではないにもかかわらず努力するほどに自信を喪失していく当時の文学者たちの精神状況を綴り、卑屈さや臆病さを抱えたままの現代の姿を肯定し、その過渡期的な自信の無さを大事に抱え続けることの重要性を説く。

太宰治

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本紙(朝日新聞)の文藝時評で、長與先生が、私の下手な作品を例に擧げて、現代新人の通性を指摘して居られました。他の新人諸君に對して、責任を感じましたので、一言申し開きを致します。古來一流の作家のものは作因が判然してゐて、その實感が強く、從つてそこに或る動かし難い自信を持つてゐる。その反對に今の新人はその基本作因に自信がなく、ぐらついてゐる、といふお言葉は、まさに頂門の一針にて、的確なものと思ひました。自信を、持ちたいと思ひます。

けれども私たちは、自信を持つことが出來ません。どうしたのでせう。私たちは、決して怠けてなど居りません。無頼の生活もして居りません。ひそかに讀書もしてゐる筈であります。けれども、努力と共に、いよいよ自信がなくなります。

私たちは、その原因をあれこれと指摘し、罪を社會に轉嫁するやうな事も致しません。私たちは、この世紀の姿を、この世紀のままで素直に肯定したいのであります。みんな卑屈であります。みんな日和見主義であります。みんな「臆病な苦勞」をしてゐます。けれども、私たちは、それを決定的な汚點だとは、ちつとも思ひません。

いまは、大過渡期だと思ひます。私たちは、當分、自信の無さから、のがれる事は出來ません。誰の顏を見ても、みんな卑屈です。私たちは、この「自信の無さ」を大事にしたいと思ひます。卑屈の克服からでは無しに、卑屈の素直な肯定の中から、前例の無い見事な花の咲くことを、私は祈念してゐます。

完

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