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TORENDIA

峠に関する二、三の考察

本文約5,000字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

日本の山々にある「峠」を題材に、その名称の語源や地理的背景、生活への影響を考察する随筆。日本各地の山路の歴史的な変遷や、鉄道等の新交通路の発展に伴う山村の経済的な衰退を描く。また、峠を越える際に感じる風や景色の変化、谷筋に沿う道と尾根を行く道の構造的な「裏表」を論じ、峠越えという旅路が持つ独自の趣と、季節や環境により絶えず移り変わる自然の風景絵巻のような魅力を綴る。

柳田国男

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🎧 峠に関する二、三の考察 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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一 山の彼方

ビョルンソンのアルネの歌は哀調であるけれども、我々日本人にはよくその情合がわからない。日本も諾威に劣らぬ山国で、一々の盆地に一々の村、国も郡も村も多くは山脈を以て境しているが、その山たるや大抵春は躑躅山桜の咲く山で、決してアルネの故郷の如く越え難き雪の高嶺ではない。山の彼方の平野と海とは、登れば常に見える。他郷ながら相応の親しみがある。中世の生活を最も鮮かに写している狂言記、あれを読んで見てもよくわかるが、山一つ彼方に伯母さんがあって酒を造っていたり、有徳人が住んで聟を捜していたりする。自分も子供の頃は「瓜や茄子の花ざかり」とか、「おまんかわいや布さらす」とかいう歌の趣をよく知っていた。その頃は小学校の新築の流行する時代であった。どの山へ登って見てもペンキ塗の偉大なる建築物が、必ず一つずつは見えた。そして振返って見ると自分の里も美しかったのである。

二 たわ・たを・たをり

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