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TORENDIA

年中行事覚書

本文約134,600字 ・ 読了時間 約270分

あらすじ(AIが作成しました)

各地に伝わる年中行事を、地域共同体の慣習や民俗学的な比較研究の対象として論じる。かつては書物や絵図で継承された公的行事とは異なり、民間の行事は口承や生活体験を通じて人々の生活を規定してきた。著者は、消えゆく歳時習俗の事実を収集し、その背景にある土地の記憶や生活様式を明らかにすることを目的とする。本文では、ネブタ等の具体的行事の変遷を検証するとともに、年間を通じた詳細な行事調査項目を列挙し、民俗学の視点から生活の実態を再構成する意義を説く。

柳田国男

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著者の言葉

日本の年中行事が、近頃再び内外人の注意をひくようになったことは事実だが、その興味の中心というべきものが、これからどの方角へ向おうとしているのか、久しくこういう問題に携わっている者には、かえって見当をつけることがむつかしい。しかし少なくとも子供に言って聴かせるように、これは昔からこうするものなのだと、説いただけでは話にもならぬし、またこのごろのジャーナリズムの如く、正月が来れば門松の由来、三月が来れば雛祭の根原などと、きまりきったことを毎年くりかえしていたのでは、観光団の通弁にはなっても、考える人の役には立たぬだろう。

そこで私は一つの方針として、今まで私たちのまだ知らずにいたことが多いということと、誰もが気をつけて見ておこうとせぬうちに、消えてなくなろうとしている年中行事が、幾らもあるということを説くのに力を入れた。今ならばまだいろいろの事実は残っていて、なるほどそうだったということも出来るし、またどういうわけでこうなのだろうと、疑って見ることも出来る。共同の疑いがあれば、それに答えようとする研究者も必ず生まれるだろう。自分がまだはっきりと答えられないからといって、問題までをしまっておくのはよくないことだと思う。

歳時習俗語彙という書物は、将来問題になりそうな年中行事の事実を、手の届く限り寄せ集めたもので、比較研究には都合のよい参考書だが、すでに絶版になって古本でも容易には手に入らない。どうかして早く増補改訂を加えた第二版を出したいと、民俗学研究所の人々は苦慮している。絵で説明がつくと、話はたしかに面白くまたわかりやすくなるのだが、それも季節があるために、よいものをたくさん集めて行くことはむつかしい。

武田理学博士の農村年中行事には、結構な写真がたくさんに出ているが、ちょうどこの本とは反対に、主として正月中の慣習に力が入れてあるので、こちらへは借りて来ることが出来なかった。しかしあの本は精確な注意深い良い記述である。これもなかなか手に入りにくいこととは思うが、もし図書館か何かで読むことが出来たならば、諸君の年中行事に対する興味は、また一段と深まるであろう。

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