秋のお約束
本文約970字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
けやきの木の変化を通じて四季の移ろいを見つめる、まあちゃんの日常を描く。母親から「けやきの葉が色づくと暖かくなる」「葉が落ちる頃が秋である」と言い聞かされ、季節の変化を学んでいく。幼稚園への道すがら見上げるけやきは、青々とした若葉から次第に枯れ枝へと姿を変え、物語を彩る。やがて秋の訪れと共に、二輪車を買ってもらうという母親との約束を思い返しながら、まあちゃんは幼い日々を豊かに過ごす様子が綴られる。
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まあちゃんが、「寒い、寒い。」といっていましたときに、お母さんは、子供たちのきものをぬいながら、
「もう、あちらのけやきの木の枝がいろづいたから、じきにあたたかくなりますよ。」と、おっしゃいました。
まあちゃんは、お母さんにつれられて幼稚園へまいります途中、ふと頭の上をあおぎ見ますと、うす緑色のやわらかなこまかな葉が、いっぱいけやきの木の枝から出て、おもしろそうに笑っていました。
「お母さん、あんなに葉が出た。」と、いつかお母さんのいわれたことを思いだしたのです。
「ほんとうに、かわいらしい葉だこと。」と、お母さんはおっしゃいましたが、いつか、まあちゃんに、
「もう、あちらのけやきの木の枝がいろづいたから、じきにあたたかくなりますよ。」といわれたことは忘れられてしまったように、まあちゃんには感じられました。
ある日、金魚売りが、あついので、この大きな、けやきの木のかげに荷をおろして休んでいました。まあちゃんは、ひとり幼稚園からの帰りに、じっと立ちどまって、金魚があさい水に泳いでいるのをながめたのです。
また、夏のあつい日のこと、兄さんの正ちゃんのおともをして、せみをとりにあるいたとき、兄さんからかごを持たされて、この木の下に立ったことがあります。
「小さな葉が、こんなに大きくなった。」と、まあちゃんは頭の中で考えました。
三輪車をもっているのに、まあちゃんは、二輪車をほしがって、お母さんを困らせました。
「秋になったら買ってあげましょうね。」と、お母さんはおっしゃいました。
「秋って、いつなの?」と、まあちゃんは足をぴちぴちさせて、畳を打ちながら聞きました。お母さんは仕事をなさりながら、
「秋といいますと、あのけやきの木の葉が落ちるころなんです。」といわれました。
まあちゃんは、はやくその秋になってくれればいいと思いました。いま、風の吹くたびにいろいろの木の葉が、小鳥の立つように飛んでちりました。
いつしか、けやきの木も、すっかり坊主となってしまいました。
まあちゃんは、幼椎園からのかえりに、青い空にそびえた高いけやきの木を見あげて、こまかいとがった枝に鳴る風の音をさびしくききました。