周一と空気銃とハーモニカ
本文約3,200字 ・ 読了時間 約7分
あらすじ(AIが作成しました)
お年玉に空気銃を貰った少年・周一は、年上の健ちゃんと共に裏山へ狩りに出かける。空気銃を誇らしく感じていた周一であったが、初めて雀を撃ち落とした際、冷たくなっていく獲物を手に寂しさと虚無感を覚える。狩猟への興味を失い家へ逃げ帰った周一は、それ以降空気銃を手にすることはなく、以前は飽きていたハーモニカの練習に打ち込み、唱歌を吹けるようになることで心の平穏を取り戻していく様子を描く。
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一
周一は、今年のお年玉に叔父さんから空気銃を貰つた。去年から欲しがつてゐたものだつたが、危いから駄目だ/\と云はれて、父からも母からも許されなかつた。その代りクリスマスの日に母から立派なハーモニカを買つて貰つたのであつた。
周一は、ハーモニカに直ぐ飽きてしまつた。何故かなら、一月もかゝつていくら一所懸命に吹いて見ても、やさしい唱歌さへ吹けなかつたからだ。
「ねえお母さん、今度の日曜に、お隣りの健ちやんと一緒なら、空気銃を持つて山の方へ遊びに行つてもいゝ?」
ある日周一は、もうどうしても空気銃が使つて見たくて堪らなくなつて、茶の間で縫物をしてゐた母の傍へ駆け寄つて斯う云つた。
「空気銃?」と、母は縫物の手を止めて、眼を丸くして聞返した。
「えゝ。」といつた周一は、これはとても駄目らしいぞと気付いたが、事更にきつぱりと、
「だつて健ちやんと一緒ならいゝでせう。」と云つた。母は黙つてゐた。
「ね、いゝでせう?」
「お父さんにお訊ねして御覧なさい。」
「ぢやお父さんが好いとおつしやつたら好いの?」
母の機嫌は益々悪く見えた。周一はもう泣き出したいやうな気持になつて、たゞ無暗と鼻をならしてゐた。
庭で草花の手入れをしてゐた父が、その様子を見ると、莨を喫しながら縁端へ来て腰をかけた。
「ぢやいゝだらう。もう一つ年を取つたんだから間違ひもあるまい。お隣の健ちやんと一緒だね。」
「えゝ、さう。」と周一は、思はず飛びあがるやうに元気よく叫んだ。
「お前に鳥なんか打てるものですか、他所の硝子でも割るのが関の山だよ。」と母は笑つたが、周一はもう嬉しくつて/\、母の言葉なんか耳に入らなかつた。
「山へ行くんだ。裏の山へ行くんだ。レオ(犬の名)も一緒に伴れてつて……」と、周一は急いで自分の部屋に駆け込んだ。
二
その晩周一は、空気銃を枕もとに置いて寝た。
翌朝は蒼々と晴れて、冬とは思へぬ位暖い日であつた。