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TORENDIA

母子ホームの子供たち

本文約3,200字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

父を戦地に送った子供たちが暮らす「あけぼの母子ホーム」を舞台に、小学生の清三と睦子が日常を健気に生きる姿を描く。二人は蚕を育て、おやつのおむすびを分け合い、夕方には共同炊事場で自ら夕食の準備をする。また、他の子供たちと屋上に植物園を作り上げるなど、厳しい戦時下の環境にありながらも、互いに助け合い工夫して遊ぶ子供たちの瑞々しい生活風景を綴る。

槇本楠郎

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🎧 母子ホームの子供たち / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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一  にぎやかな電車通の裏に、川に沿つた静かな柳の並木道があります。その最初の石橋を渡ると、すぐ前に白い三階の大きな建物が、青青とした庭木に包まれて聳えてゐます。

五年生の清三は、かんかんてりの真夏の西日を浴びて、元気よく学校から帰つて来て、その石の門をはいると、病院のやうな広い玄関で、同じやうに今学校からかへつたばかりの、六年生の睦子にあひました。

「あら、おかへり。清ちやん、それ、なに。」

睦子は玄関の入口の「あけぼの母子ホーム」といふ大きな看板のかかつてゐる下で、ふちの広い桃色の帽子をぬぎながら、清三が白いハンケチに包んでゐるものを見つめました。

「いいもんだよ、睦子ちやん。あててごらん。」

さういひながら二人は、玄関を奥にはいつて、「受附」といふ札の下つてゐる小さい部屋の窓口をのぞいて、そこのをばさんに「ただいま。」といひました。

「おかへりなさい。とても暑かつたでせう。はい、はい。」

さういつてをばさんは、二人の部屋の合鍵を、別別に出してくれました。清三の鍵には「二十七番」、睦子の鍵には「三十一番」といふ、小さな番号札がついてゐました。

「どうもありがたう。」

鍵を受取ると、二人は奥にはいつて廊下で上草履にはきかへました。そしてコンクリートの階段をのぼつて行きながら、話しつづけました。

「ねえ、清ちやん、ほんとに、なによ。ちよつと見せてね。」

「だめ、あててごらん。あてたら一匹あげるよ。」

「ぢや、あてるわよ。角のあるもの。」

「ないよ。」

「ぢや、足は六本あるでせう。」

「ちがふよ。もつと、たくさんあるらしいよ。」

「ぢや、あんた、百足虫をもつてるの。ああ、おつかない。」

「あはつ。そんな悪い虫ぢやなくて、とつてもいい虫虫様だよ。もう、わかつたらう。」

「ああ、わかつたわ。蚕でせう。さうでせう。どらどら、見せてちやうだい。」

「ぢや、僕のうちへお出でよ、わけてあげるから。」

二人は三階の廊下へ来ました。廊下の両側は同じやうな、六畳ぐらゐの部屋が七つづつ並んでゐて、清三の家と睦子の家とは、ななめ向かひの部屋でした。

「ね、いらつしやいよ。」

「ええ、すぐ行くわ。」

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