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TORENDIA

東京で自慢の鮑

本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

三崎や房州を本場とするあわびについて、その選び方や扱いを綴る。雌雄による肉質の差を見極め、塩蒸しや水貝といった料理法に応じた適材適所の手法を説く。また、東京で手に入る良質なあわびこそが美食に適していると論じ、家庭でも取り入れられるとろろ汁やわたを使った和え物など、貝の持ち味を最大限に引き出す工夫を紹介する。四季折々の食文化の中で、夏の東京におけるあわびの優位性と楽しみ方を詳細に解説する。

北大路魯山人

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🎧 東京で自慢の鮑 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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これから秋までつづく夏季の美肴中、とりわけ重きをなしているものに、あわびが挙げられる。料理の仕方は古来様々あるが、通常は生のままで食う水貝、蒸して食う塩蒸しが万人によろこばれ、江戸自慢のひとつとなっている。事実、このあわび、東京とは目と鼻の三崎、房州方面を本場として、余所では得難いまでに優れたものが産する。その点から言っても、夏の東京における美食は恵まれている。大きさなら一つ五、六百匁のものは、毎朝の魚河岸にざらに並べられている。この大物は雌で、肉面が粘土色をして、見るからにやわらかそうである。肉面青黒く、大きさもせいぜい三、四百匁のものが雄だということで、見かけからして、すでに堅固なしまりがある。

塩蒸しには雌が適し、生で食う水貝仕立て、あるいは酢貝には雄でなければならない。塩蒸しの製法は、酒塩で煮つめる江戸前もあるが、そんなにしなくても、貝ごと水洗いしたあわびに、塩を充分にまぶし、一時間以上蒸せばよい。三時間、五時間、十時間と蒸すに従い、いやが上にもやわらかくなるものであるが、やわらかになればなるほど、あわびの味の逃げることを知るべきである。美味さで言えば、三百匁ぐらいのものに妙味が存する。雌は肉がやわらかなために水貝または酢貝に適しないが、雄は塩を強くまぶすことによって石のように締まり、歯さえよければ、その人には清新の気に満ちた夏の良肴として一等席を占めるものである。これに接するよろこびは、京、大阪では得られないものであって、たって所望とあれば東京から取り寄せるほかはない。大阪の中央市場にも大物あわびのないことはないが、それは朝鮮のものが多い。

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