俳句の作りよう
本文約45,400字 ・ 読了時間 約91分
あらすじ(AIが作成しました)
俳句を始めたいと願いながら何から手を付けてよいか迷う人々に、まずは何でもよいから十七字を並べることを説く。四季の題材や「や」「かな」「けり」の切れ字を用いた例句を挙げ、推敲の重要性を論じる。また、古句の苦心のあとを探り、自身の創作に応用する研究法を提唱し、芭蕉の句にみる深遠な主観のあり方や、今日の文学における俳句の意義について考察する。
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かつてある人の言葉に「虚子の俳話は俗談平話のうちに俳諧の大乗を説くものなり」とあったことは我が意を得た言である。近時は平易にいってすむことを高遠めかしく説くことが流行である。私はそれに与しない。
大徳智識の法話に「仮名法語」なるものがある。婦女老幼にも判るようにと仏の大道を仮名交じりの俗談平話に説くのである。読者この書をもって俳諧の仮名法語として見られよ。
(ホトトギス大正二年十一月号以下掲載・虚子講述)
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一 まず十七字を並べること
俳句を作ってみたいという考えがありながら、さてどういうふうにして手をつけ始めたらいいのか判らぬためについにその機会無しに過ぎる人がよほどあるようであります。私はそういうことを話す人にはいつも、
何でもいいから十七字を並べてごらんなさい。 とお答えするのであります。
中にはまた、俳句を作るがために参考書も二、三冊読んでみたし、句集も一、二冊読んでみたが、どうもまだどうして作ったらいいのか判らぬという人があります。そういう人には私は、
どうでもいいからとにかく十七字を並べてごらんなさい。 とおすすめするのであります。何でもかまわん十七字を二、三句並べてみて、その添削を他に請うということが、俳句を作る第一歩であります。謡を習うのでも三味線を弾くのでもまず皮切をするということがその芸術に足を踏み入れる第一歩でありますが、実際はこの皮切がおっくうなために、句作の機会を見出しかねておる人が多いようであります。
とにかく十七字を並べてみるに限ります。けれども十七字を並べるというだけでは、漠然として拠り所がないかもしれません。それで私はとりあえずこうおすすめします。
「や」「かな」「けり」のうち一つを使ってごらんなさい、そうして左に一例として列記する四季のもののうち、どれか一つを詠んでごらんなさい。
元日 門松 萬歳 カルタ 松の内 紅梅 春雨 彼岸 春の山 猫の恋 時鳥 牡丹 清水 五月雨 富士詣 七夕 秋風 目白 椎の実 秋の暮 時雨 掛乞 牡蠣 枯尾花 鐘冴ゆる