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TORENDIA

銭形平次捕物控

本文約12,200字 ・ 読了時間 約25分

あらすじ(AIが作成しました)

花川戸の質両替屋の娘お雛が、観音詣の帰途に行方不明となる。その後、娘の幽霊が目撃されるという怪奇現象が起こり、娘の葬儀を出すよう霊が要求したという噂が広まる。この不可解な事態に、捕物名人の銭形平次が動き出す。平次は手掛かりを追う中で、易者による不審な勧誘と、足を結綿で縛られた烏の存在を知る。やがて、平次は悪党の轟権三が娘を監禁し、衆人環視の中で害そうとする計画を突き止め、鋭い投げ銭の技を駆使して現場に乗り込む。

野村胡堂

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一

「親分、聞きなすったか」

「何だ、騒々しい」

銭形平次の家へ飛込んで来た子分のガラッ八は、芥子玉絞りの手拭を鷲掴みに月代から鼻の頭へかけて滴る汗を拭いております。

「大変な事がありますぜ」

「また、清姫が安珍を追っかけて、日高川で蛇になった――てな話だろう」

「冗談じゃねえ、今日のはもっとイキのいい話だ。何しろ、仏様のねえお葬いを出したのはお江戸開府以来だろうって評判ですぜ」

「何? 仏様のねえ葬い、――どこにそんな事があった」

平次もツイ乗出しました。日頃は話半分にしか聞かれないガラッ八ですが、今日持って来たネタには、何かしら人の好奇心をそそる重大性がありそうです。

「近江屋の小町娘、――お雛が行方知れずになった話はお聞きでしょう」

「それは聞いた。観音様へお詣りに行った帰り、供をしていた女中の眼の前で行方知れずになったという話だろう」

「それが、海河に落ちて死んだか、人手にかかったか、三日目から毎晩のように化けて出たって言いますぜ」

「怪談話なんか聞いてやしねえ、馬鹿野郎」

「馬鹿野郎は情けねえな、それがみんな本当の話なんだから恐ろしい」

「それで、仏様のない葬いを出したって筋だろう。紋切型の怪談じゃないか、江戸開府以来もねえものだ」

「ところがね親分、それがみんな幽霊の註文なんだって言いますぜ」

「何? 幽霊の註文、贅沢な亡者もあったものじゃないか」

「葬いを出してくれなきゃア浮ばれないから、私の持物のうちでも、日頃から大事にしていたものや金目のものをみんな纏めて、身体の代りに、小判で三百両棺桶の中へ入れて、祖先の墓の側に埋めて貰いたい――って」

「八ッ、それは本当か」

「本当にも何にも、町内で知らねえのは銭形の親分ばかりさ」

「とんでもねえ野郎だ。俺の住んでいる町内で、そんな人を舐めた事をしやがって、ガラッ八、来い」

帯をキュッと締め直すと、白磨きの十手を手拭に包んで懐の奥へ、麻裏を突っかけて、パッと外へ飛出します。

「親分、どこへ行きなさるんだ。断っておくが、あっしのせいじゃないぜ」

平次の意気込みに驚いて、少しおどおどするのを、

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