おれは二十面相だ
本文約51,600字 ・ 読了時間 約104分
あらすじ(AIが作成しました)
古代研究所で、エジプトの巻き物が収められた密室から一人の大学生が消え去るという謎の事件が発生する。松波博士の依頼を受けた明智探偵と小林少年は調査に乗り出し、怪人二十面相の存在に迫る。その後、真珠のゾウを狙って恩田家に潜入した二十面相に対し、女中に変装した小林少年や、西洋のよろいに隠れていた明智が連携して立ち向かう。知略を尽くした追跡の結果、明智はついに怪人の隠れ家を特定し、組織を追い詰めていく過程を描く。
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消えうせた大学生
五月のある日のこと、麹町の高級アパートにある明智探偵の事務所へ、ひとりの老紳士が、たずねてきました。
ふさふさとした白いかみを、オールバックにして、白い口ひげをはやした、やせがたで、背のたかい、りっぱな老紳士です。
この人は松波文学博士で、あるお金持ちがたてた古代研究所の所長なのですが、西洋の古代のことをしらべている、有名な学者でした。
明智探偵は、ある会で松波博士とあったことがあるので、知りあいのあいだがらでしたが、その有名な老学者が、とつぜんたずねてきたのです。
とりつぎに出た小林少年は、松波博士と聞いて、ていねいに、応接室にあんないしました。
「明智さん、わたしのつとめている古代研究所に、みょうなことがおこりましてね。きょうは、あなたのお知恵をかりようとおもって、うかがったのです。」
松波博士はいすにかけると、すぐにそう口をきりました。
「みょうなことと言いますと?」
明智がたずねますと、博士は話しはじめました。
「古代研究所は、ついこのごろ、世界にたった一つという、古代エジプトの経文を書いた巻き物を手に入れたのです。わたしたちの研究所の木下博士が、イギリスで見つけて買って帰ったもので、そのことは新聞にも出ましたから、ごぞんじかもしれませんが、お金にかえられない、世界の宝物です。
ところが、この巻き物には、おそろしい、いいつたえがあるのです。それのおいてある部屋には、なにかしら、ふしぎなことがおこるというのです。イギリスでも、いろいろ気味のわるいことがおこったらしいのですね。それで、この巻き物の持ち主がこわくなって、売る気になったのです。
木下さんは、この宝物を、日本のお金にして、たった三十万円ほどでゆずりうけてきたのですが、ほんとうは、その何倍、何十倍の値打ちのものです。
さて、この巻き物を、研究所のエジプトの部屋へおさめたのですが、すると、たちまちおそろしいことがおこりました。
きのうのことです。研究所へひとりの大学生がやってきました。そして、エジプトの部屋においてあるミイラの棺を見たいというので、部屋にはいることをゆるしたのです。