TORENDIA
書狼書豚
辰野隆
TORENDIA
書狼書豚
本文約5,000字 ・ 読了時間 約11分
あらすじ(AIが作成しました)
著者と親友の山田珠樹、鈴木信太郎という三人の愛書家たちの書物をめぐる交流や、蒐集への執念を描く随筆。所有に対する独自の哲学や、互いに稀覯書を巡って繰り広げられる滑稽なやり取り、そしてそれぞれの書斎が持つ独特の風情を綴る。書物を愛する者たちが、所有や読書という行為を通じて経験する愛着や苦悩をユーモアを交えて浮き彫りにし、愛書家の生態と友情を浮き彫りにする一編である。
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🎧 書狼書豚 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ
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古は渇して盗泉の水を飲まず、今は盗泉の名を改めて飲む。といふのは、今から二十五六年前に、長谷川如是閑氏の吐いた警句であるが、氏は近頃再た、悉く書を信ぜば書なきに如かずといふ怠け者の格言を、悉く書を信ぜざれば書あるに如かず、と訂正した。蓋し真に書を読む人の体験でもあり、達人の至言でもある。
元来、書物などは実生活には無用の長物であるから、読まぬ奴は読まぬし、信ぜぬ輩は信ぜぬのだから、少きを患ひともせず、多きを妨げずと悟つた方が温くて涼しからう。ところが、同じく書物でも珍本、稀覯書、豪華版と来ると、こいつは多きを惧れ、少なければ少ないほど所有者は鼻を高くする。斯ういふ病が高じると、世界に二冊しかない珍本を二冊とも買取つて一冊は焼捨ててしまはねば気がすまなくなつて来る。親友山田珠樹、鈴木信太郎の両君が正に此種の天狗のカテゴリイに属する豪の者である。彼等の言ひ草に依ると、『あれほど味の佳い秋刀魚や鰯が、あり余るほど漁れて、安価いのが、そもそも怪しからん』のださうである。なるほど秋刀魚や鰯も、若し尠ければ、たしかに、豪華版になる価値がある。
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