TRENDIA CLASSIC

「樋口一葉全集第二卷」後記

久保田万太郎

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この卷には、前卷(第一卷)を承けて、『琴の音』以下十四篇の小説を收めた。

『琴の音』  この作、明治二十六年十一月の「文學界」に載つた。一葉、二十二歳のときで、そのときかの女は下谷龍泉寺町(俚俗大音寺まへ)に荒物と駄菓子の店をひらいてゐた。

この作を書いた前後のことを、かの女は、その年十一月の日記の中にかうしるしてゐる。

十八日 はれ。禿木子來訪、文界の事につきてはなし多し。 十九日 はれ。神田にかひ出しす、明日は二の酉なれば店の用事いそがはし。  文學界に出すべきものもいまだまとまらざる上に、昨日今日は商用いとせわしくわづらはしさたえ難し。  二の酉のにぎはひは此近年おぼえぬ景氣といへり、熊手、かねもち、大がしらをはじめ延喜物うる家の大方うれ切れにならざるもなく、十二時過る頃には出店さへ少なく成ぬとぞ、廓内のにぎはひおしてしるべし。 よの中に人のなさけのなかりせば

ものゝあはれはしらざらましを

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