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TORENDIA

紙幣鶴

本文約540字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

カフェの一隅で、ひとりの娘が墺太利の千円紙幣を用いて熱心に鶴を折っている。通りがかった筆者は、高価な紙幣を惜しげもなく折り紙に使う娘に対し、勿体ないと声をかける。娘は微笑みながら紙幣の鶴を虚空へ向けて吹き飛ばし、筆者へドイツ語で言葉を投げかける。筆者はその光景から感じたある種の感銘を留めるために、この小話を書き綴る。

斎藤茂吉

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🎧 紙幣鶴 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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ある晩カフェに行くと、一隅の卓に倚ったひとりの娘が、墺太利の千円紙幣でしきりに鶴を折っている。ひとりの娘というても、僕は二度三度その娘と話したことがあった。僕の友と一しょに夕餐をしたこともあった。世の人々は、この娘の素性などをいろいろ穿鑿せぬ方が賢いとおもう。娘の前を通りしなに、僕はちょっと娘と会話をした。

「こんばんは。何している」

「こんばんは。どうです、旨いでしょう」

「なんだ千円札じゃないか。勿体ないことをするね」

「いいえ、ちっとも勿体なかないわ。ごらんなさい、墺太利のお金は、こうやってどんどん飛ぶわ」

そうして娘は口を細め、頬をふくらめて、紙幣で折った鶴をぷうと吹いた。鶴は虚空に舞い上ったが、忽ち牀上に落ちた。

娘は、微笑しながら紙幣で折った鶴を僕に示して、※[#下側の右ダブル引用符、U+201E、41-1]fliegende oesterreichische Kronen!“こういったのであった。この原語の方が、象徴的で、簡潔で、小癪で、よほどうまいところがある。けれども、これをそのまま日本語に直訳してしまってはやはりいけまい。

この小話は、墺太利のカアル皇帝が、西班牙領の離れ小島で崩じた時と、同じような感銘を僕に与えたとおもうから、ここに書きしるしておこう。

完

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