超人ニコラ
本文約80,300字 ・ 読了時間 約161分
あらすじ(AIが作成しました)
渋谷に住む玉村銀一は、映画の中に自分と瓜二つの少年が映っているのを見て困惑する。やがて銀一はスリを疑われ、友人との関係も不穏になる。小林少年もまた、自身とそっくりの存在が少年探偵団を操っていると告げられ監禁される。これは、超人ニコラ博士を名乗る人物が、人間改造術を用いて人々を本人と入れ替え、社会を攪乱しようと企てる中で、明智探偵と少年探偵団がその陰謀に立ち向かう姿を描く物語である。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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もうひとりの少年
東京の銀座に大きな店をもち、宝石王といわれている玉村宝石店の主人、玉村銀之助さんのすまいは、渋谷区のしずかなやしき町にありました。
玉村さんの家庭には、奥さんと、ふたりの子どもがあります。ねえさんは光子といって高校一年生、弟は銀一といって中学一年生です。
あるとき、その玉村銀一君の身の上に、じつにふしぎなことがおこりました。それがこのお話の出発点になるのです。
その夜、玉村君は、松井君、吉田君という、ふたりの友だちと、渋谷の大東映画館で、日本もののスリラー映画を見ていました。
それは大東映画会社の東京撮影所で作られたもので、映画の中に、ときどき、東京の町があらわれるのです。
「あっ、渋谷駅だっ。ハチ公がいる。」
松井君が、おもわず口に出していいました。それはおっかけの場面で、にげる悪者、追跡する刑事、カメラがそれをズーッとおっていくのですが、そこへ駅前の人通りがうつり、ハチ公の銅像も、画面にはいったのです。
「あらっ、玉村君、きみがいるよ。ほら、ハチ公のむこうに、やあ、へんな顔して、笑ってらあ。」
吉田君が、とんきょうな声をたてたので、まわりの観客が、みんなこちらをむいて、「シーッ。」といいました。
玉村君は、スクリーンの上の自分の姿を見て、へんな気がしました。ハチ公の銅像のうしろから、こちらをのぞいて、にやにや笑っている自分の顔、それが一メートルほどに、大きくうつっているのです。
それがうつったのは、たった十秒ぐらいですが、たしかに自分の顔にちがいありません。玉村君は、ここにうつっているのは、いつのことだろうと考えてみました。
「おやっ、へんだな。ぼくは渋谷駅で、映画のロケーションなんか見たことは、一度もないぞ。」
いくら考えても、おもいだせません。知らないうちに、うつされてしまったのでしょうか。まさか、ロケーションに気づかないはずはありません。
そのばんは、うちにかえって、ベッドにはいってからも、それが気になって、なかなかねむれませんでした。
あれは、自分によくにた少年かもしれないとおもいましたが、しかし、あんなにそっくりの少年が、ほかにあろうとは考えられないではありませんか。